こんにちは。digireka!HR編集部です。多様な人材や働き方を受け入れ活用するダイバーシティ・マネジメントは、現代の国際社会において多くの企業で取り組まれています。しかし日本ではその導入が遅れていると言われており、多様性に関する様々な問題が指摘されています。
今回はダイバーシティ・マネジメントについて、日本の現状や導入のメリット・デメリット、成功のポイントや企業事例まで詳しく解説していきます。
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ダイバーシティ・マネジメントとは
ダイバーシティ・マネジメントとは、企業が従業員の多様な個性を受け入れ、能力を活かしながら組織力を高めることです。性別や年齢、身体的特徴を限定しない人材の受け入れや、在宅勤務・非正規雇用といった柔軟な労働形態を推進することで、労働力確保や企業の生産性向上などの効果が期待されています。
ダイバーシティ・マネジメントは1980年代のアメリカにおいて、企業の社会的責任(CSR)の一環として取り組まれるようになりました。以前より過去の反省に基づいて人種的マイノリティや女性の登用に力を入れていたアメリカでは、ダイバーシティ・マネジメントを積極的に打ち出すことで、「誰もが活躍できる企業」という企業イメージの向上を目指したのです。
日本におけるダイバーシティ・マネジメントの歴史と現状
日本におけるダイバーシティ・マネジメントの歴史
日本では1985年に「男女雇用機会均等法」が施行され、男女間の雇用格差を是正する取り組みが始まりました。その後も「男女共同参画社会基本法」で男女差別が廃止され、近年では「女性活躍推進法」によって女性の働きやすい環境づくりが推進されています。他にも外国人労働者受け入れのための「改正出入国管理法」、高齢労働者に向けた「高年齢者雇用安定法」、労働環境の見直しに関する「働き方改革」など様々な制度整備がなされています。
日本の現状
様々な制度整備に関わらず、日本ではダイバーシティ・マネジメントがまだあまり企業に浸透していません。特に女性の社会進出や管理職登用は海外に比べて遅れており、国際労働機関(ILO)の発表によると、2018年の世界の女性管理職比率は27.1%に対して、日本は12%となっています。原因として、男女の役割に関する固定観念が根強いことや子育て支援が不十分なこと等が挙げられます。
高齢者や外国人の採用もあまり進んでおらず、労働形態の柔軟化も広がりが見えない状況にあります。一方で少子化に伴う労働力確保の必要性、またグローバル化による外国人との協働の必要性は年々高まっており、激化する競争を勝ち抜くためにもダイバーシティ・マネジメントの重要性が増してきています。
ダイバーシティ・マネジメントを導入するメリット
人材確保
ダイバーシティ・マネジメントによって採用する人材の幅が広がるため、より多くの労働力を集めることができます。能力がありながらこれまで登用できなかった人材を労働力にできるため、生産性向上につながるでしょう。例えば定年後のシニア層の場合、ビジネス面での経験を生かして業務に取り組むため即戦力になりやすいです。
また、労働環境を整備することで、これまで育児や介護、あるいは持病によって職場から離れていた社員の復帰を促し、優秀な社員の定着につなげることができます。労働力不足の現代において、取り組む意義は大きいでしょう。
企業変革と成長
多様な人材を採用することで、これまでにない新しい視点や価値観を持った人材が入社することになります。様々な角度から意見やアイデアを募ることができるため、会社の創造力の強化やイノベーションにもつながるでしょう。
実際、欧米の大手企業では、ダイバーシティがイノベーション創出に欠かせない重要な経営戦略として位置づけられています。そうした企業文化や組織風土の変革は、大きな企業成長につながるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
働きやすい環境を作ることで、従業員のモチベーション向上が期待できます。意欲や仕事のやりがいを高めることで、作業の効率化や生産性の向上につながるでしょう。また、仕事に余裕が生まれることで、資格の勉強やセミナーへの参加といった個人のスキルアップに生かすこともできます。社員の満足度が高まることで会社への定着を促せるなど、たくさんの効果が見込めるでしょう。
企業イメージの向上
多様な人材の受け入れは、社外にも好印象をもたらします。企業イメージが向上することで、商品の売れ行きが伸びたり優秀な人材が求人に応募するなどの効果が期待できます。
ダイバーシティ・マネジメントを導入するデメリット
企業の統制が困難
多様な人材が社内に混在することで、部署やチームの方向性をまとめるのに時間や手間がかかるでしょう。意見の対立などで調整が難航することで、関係悪化やパフォーマンス低下につながる恐れもあります。勤務地や勤務時間が人によって異なる場合には、連携を取りにくいといった面もあるでしょう。
コミュニケーションにおける弊害
新たな人材を登用することで、価値観の違いや言語の違いにより従業員の間で軋轢が生じ、トラブルにつながる恐れがあります。相手への無理解がハラスメントを生み、ストレスを抱えた社員が辞職・転職してしまう可能性もあるでしょう。また、言語の壁によって意思疎通がうまくいかず、誤解によるミスの多発も考えられます。
ダイバーシティ・マネジメントを成功させるポイント
社員間のコミュニケーションを促進する
多様な価値観の人材と協働するためには、充実したコミュニケーションが必須です。相互理解を促すため、また言語の壁を乗り越えるためにも、積極的に意思疎通を図ることで場への適応を促進できるでしょう。
企業理念の共有
多様な価値観や働き方を認めつつ、組織として一体感のある会社にするためには、企業理念や組織戦略を社員に浸透させることが効果的です。会社としての理念や方向性をあらかじめ共有しておくことで、社員が共通の行動指針を持って業務に励むことができます。そうすることで会社の取り組みにも理解を得られやすくなり、連携の促進や対立の回避につながるでしょう。
ダイバーシティ・マネジメントの企業事例
損害保険ジャパン株式会社
損害保険ジャパン株式会社では2003年からダイバーシティ・マネジメントに積極的に取り組んでいます。支援する5つの視点として「女性活躍」「障がい者活躍」「グローバル人材活躍」「中高年活躍」「LGBT活躍」を掲げ、様々な制度拡充に取り組んでいます。また、そうした取り組みが評価され、多くの賞を受賞しています。
受賞履歴(一部抜粋)
2017年 3月 NPO法人J-Win「2017J-Winダイバーシティ・アワード(アドバンス部門)」準大賞 受賞
2017年 10月 東京都「時差Biz推進賞(ワークスタイル部門)」 受賞
2018年 4月 公益財団法人日本生産性本部「第3回女性活躍パワーアップ大賞」大賞 受賞
2020年 3月 経済産業省・東京証券取引所「令和元年度なでしこ銘柄」 選定(2018 年度から継続して選定)
2020年 11月 work with Pride「PRIDE 指標」ゴールド 受賞(2019年度から継続して受賞
参照:損害保険ジャパン株式会社「Diversity for Growth ~損保ジャパンのダイバーシティ推進の取組み~」URL:https://www.sompo-japan.co.jp/company/diversity_dev/diversity/
カルビー株式会社
カルビーグループでは、「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」という信念の下、ダイバーシティの最優先課題として女性の活躍推進に注力しています。2010年にダイバーシティ委員会を組織してから本格的に活動を開始し、障がい者雇用の促進、外国人の活躍推進、LGBTの支援等の属性の多様性の理解促進等を行っています。
2020年に女性管理職比率が20.4%(2010年時点で5.9%)を記録したり、同年3月期におけるカルビーとカルビー・イートークを合わせた障がい者雇用率が2.52%になるなどの成果が上がっています。
三菱商事株式会社
三菱商事グループでは、ダイバーシティ・マネジメントの意義を「経営環境の変化に対応できる、柔軟で強い組織をつくること」としており、企業理念である三綱領の精神を共有しつつ以下の3点を目指しています。
・背景・価値観等の違いによる、新たな視点や発想を、経営・事業創造や地域展開に活かすこと
・多様な人材が、職場で受容され、活かされることによる、組織全体のパフォーマンス向上
〇育児や介護などとの両立支援
〇国籍を超えた人材の活躍促進
〇女性活躍推進
〇LGBTが働きやすい職場づくり
〇シニアの活躍支援
〇障がいのある人々の能力の最大化
〇多様な価値観に対する理解の促進
特に子育て支援や介護との両立支援における制度拡充が進められています。
まとめ
ダイバーシティ・マネジメントを実施することで、労働力の確保や国際的な競争力の向上が期待できます。一方で、コミュニケーションの弊害や組織統制の難しさなどの課題も挙げられます。実施の際にはさまざまな影響を想定したうえで、適切に運用できるよう心がけましょう。
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