将来のリーダー候補や専門性の高い人材を育成できる可能性を秘めた新卒採用は、企業の成長を左右する重要な戦略の一つになります。
しかしながら、育成コストなどの観点からその導入にはいくつかの障害が存在することも事実です。加えて、厚生労働省の『一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)』に記載されているように、採用市場では依然として売り手優位が続いているため、その難易度は以前にも増して困難になってきています。
そのため、「新卒採用ってやる意味あるの?」「他の企業はどういう目的で実施してるの?」といった疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで本記事では、新卒採用の目的に関し、基本的な考え方や、他の採用方法との違い、実践的なノウハウまでを詳しく解説していきます。
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新卒採用の基本知識
新卒採用は日本の雇用システムの中でも特徴的な位置づけを持つ制度として知られています。まずはその特異性と意義について、掘り下げて見ていきましょう。
新卒採用の定義とこれまで
日本の新卒採用は、単なる人材確保の手段を超えて、独自の文化として発展してきました。学校を卒業したばかりの若者を採用し、社会人として一から育てていくこの仕組みには、日本企業ならではの「人づくり」の思想が色濃く反映されています。
戦後の高度経済成長期に確立したこの制度は、企業の人材育成と若者の円滑な社会参入を支える重要な役割を果たしてきました。そして今なお、多くの企業にとって欠かすことのできない採用手法として定着しているのです。
昨今の新卒採用市場動向
ここ数年、新卒採用市場は大きな転換期を迎えています。少子化による若年労働人口の減少や、働き方に対する価値観の多様化により、従来の採用手法だけでは通用しなくなってきているのです。
また、デジタル技術の発展は採用活動にも大きな変革をもたらしています。オンライン面接やAIを活用した選考など、新しい採用手法が次々と登場する中、企業には従来の価値観を大切にしながらも、時代に即した柔軟な対応が求められているのです。
新卒採用のメリットとデメリット
新卒採用の目的を定めるためには、その価値と課題を深く理解する必要があります。
そこで、以下のようなメリットデメリットについて詳しく解説していきます。
新卒採用のメリット4選
新卒採用が日本の雇用システムの中核として機能し続けている背景には、企業にとって無視できない複数の利点が存在します。
その効果は短期的な人材確保に留まらず、組織の持続的な発展にも大きく寄与しています。
企業文化の継承
新卒社員には、既存の価値観や仕事の進め方にとらわれない柔軟さがあります。この特徴を活かし、企業独自の文化や理念を自然な形で受け継いでもらうことができます。
時間をかけて丁寧に価値観を伝えることで、組織の一体感が生まれ、より強固なチームワークの構築へとつながっていくのです。
新たな考え方や視点の導入
現代社会であれば、デジタルネイティブとして育った新卒社員たちは、組織に新しい風を吹き込んでくれます。彼らの持つ斬新な発想や最新のデジタルスキルは、従来の業務プロセスを見直すきっかけとなることもあります。
このように、時代に応じた新しい考えや視点を取り入れることができるのは新卒採用にしかない良さになります。また、若い世代ならではの感性は、新たなビジネスチャンスの発見にもつながっていきます。
将来のリーダー・幹部候補の育成
新卒採用の真価は、長期的な人材育成にあります。入社時から計画的な教育を積み重ねることで、企業のビジョンを深く理解したリーダーを育てることができます。
時間をかけて養われるリーダーシップや問題解決能力、自社理解は、組織の中核を担う人材に不可欠な要素となるでしょう。
人員構成の最適化
定期的な新卒採用は、組織の年齢構成を健全に保つ効果があります。世代間のバランスが取れた組織では、経験と新しい視点が自然に融合し、持続的な成長への原動力となります。
また、計画的な世代交代を進めることで、組織の活力を長期的に維持することができるのです。
新卒採用のデメリット4選
もちろん、新卒採用には避けて通れない課題も存在します。これらの問題に目を背けず、理解することが新卒採用の成功につながります。
育成コストが高い
新卒採用では、採用活動から入社後の育成まで、企業に大きな財務的負担がかかります。採用広報や会社説明会の開催、数次に渡る選考プロセスの実施など、採用段階での支出は小さくありません。
さらに入社後は、研修プログラムの実施や教育担当者の人件費、研修施設の確保など、継続的な投資が必要となります。このように初期費用が膨らむ一方で、すぐに収益には結びつかないため、特に中小企業にとっては大きな経営課題となることがあります。
戦力化までのタイムラグが大きい
新卒社員が実戦力として活躍できるまでには、相当な時間を要します。ビジネスマナーの習得から始まり、業界知識の蓄積、実務スキルの向上など、段階的な成長が必要です。この間、業務の生産性は必然的に低下し、先輩社員の指導時間も増加します。
特に繁忙期には、新卒社員のフォローと通常業務の両立が難しくなり、部署全体のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性もあります。
採用時の適性判断が難しい
就業経験のない学生の場合、面接や適性検査だけでは、実際の業務適性を正確に判断することが極めて困難です。表面的なコミュニケーション能力や学業成績だけでは測れない、実務での対応力や粘り強さなどが、入社後に期待と異なることも少なくありません。
また、企業側も限られた接点の中で判断を迫られるため、採用後に想定以上の育成負担が発生するリスクを抱えています。
教育体制の質の維持と標準化が難しい
複数の新卒社員を同時に育成する場合、教育の質を均一に保つことが難しい課題があります。教育担当者によって指導方針や熱意にばらつきが生じたり、配属部署による教育機会の差が出てしまったりすることも少なくありません。
また、業務の繁忙期には十分な指導時間が確保できず、育成計画が予定通り進まないこともあります。さらに、昨今のリモートワークの浸透により、対面でのきめ細かい指導が難しくなっているという新たな課題も出てきています。
新卒採用のメリット5選!デメリットや向いている企業についても徹底解説!
新卒採用の目的4選
企業が新卒採用に力を入れる理由は、単なる人員補充以上の戦略的な意図が込められています。
企業によっては少し異なることもあるため、ここでは代表的な以下の導入目的について詳しく解説していきます。
将来を担うリーダー候補の育成
組織の持続的な成長には、次世代のリーダーシップを担う人材の存在が不可欠です。この観点から、新卒採用は企業の未来への投資といえるでしょう。
若いうちから幅広い業務経験を積むことで、企業のビジョンを深く理解し柔軟な判断力と広い視野を兼ね備えたリーダーの育成につながっているのです。
企業文化の継承と進化
企業文化は、単なる理念や規範以上の価値を持ちます。それは組織の DNAとして、世代を超えて受け継がれていく必要があります。新卒採用は、このバトンを確実に次世代へ引き継ぐ重要な機会となります。
重要なポイントは、単なる継承に留まらない点にあります。新しい世代の解釈や実践により、企業文化は少しずつ進化し、時代に適応していくのです。
イノベーションの推進
新卒者がもたらす新鮮な視点は、組織に変革の種となることがあります。特にデジタル技術やサステナビリティなど、現代的な課題に対する感度の高さは、企業の革新を促進する重要な要素となっています。
新卒者の存在は、組織の硬直化を防ぎ、継続的な進化を支える原動力となっているのです。
多様性がもたらす組織活性化
新卒採用は、組織に多様な価値観や専門性をもたらします。異なる教育背景や経験を持つ若手の存在は、既存の考え方や業務プロセスに新たな視点を提供します。
またこの多様性は、グローバル化が進む現代のビジネス環境において、ますます重要性を増しているのです。
他の採用形態との目的の違い
企業の人材戦略において、各採用手法にはそれぞれ固有の意義があります。
ここでは、新卒採用と他の採用形態との違いを掘り下げることで、より効果的な採用戦略の立案に役立つ視点を提供します。
中途採用との目的の違い
新卒採用と中途採用は、人材戦略における両輪とも言えますが、その目指すところは大きく異なります。
中途採用では、具体的な業務課題の解決や、特定の専門性を持つ即戦力の確保が主目的となります。例えば、デジタルマーケティング部門の立ち上げ時には、実務経験豊富な中途採用者が牽引役として必要不可欠です。
一方で、新卒採用は長期的な視点での人材育成に重きを置きます。未経験だからこそ、企業独自のノウハウや価値観を深く理解した人材として成長できる可能性を秘めています。
中途採用とは?新卒・キャリア採用との違いやメリット、成功のポイントを解説
第二新卒採用との目的の違い
第二新卒採用は、純粋な新卒採用と中途採用の中間的な性質を持ちます。既に社会人としての基本的なスキルを身につけており、かつ、まだ柔軟な発想や学習意欲を持ち合わせているのが特徴です。実際、短期離職を経験したことで、より明確な目的意識を持って入社してくるケースも少なくありません。
これに対し、新卒採用では「白紙の状態」から企業カラーを染み込ませていくことができます。ある金融機関では、新卒者向けの3年間の育成プログラムを通じて、業界特有の専門知識と企業独自の価値観を段階的に習得させています。
このように、第二新卒と比較しても一から計画的な人材育成を行える点が、新卒採用最大の特徴といえるでしょう。
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【4STEP】目標達成に向けた新卒採用計画の立て方
新卒採用の成否は、目標/目的から逆算した緻密な計画立案にかかっています。
ここでは、効果的な採用計画の立案から実行までの具体的なプロセスを、実践的な視点から解説していきます。
採用目標/目的を具体化する
採用目標の設定は、単なる人数合わせではありません。長期的な経営戦略と密接に連動した明確な「目的」を持つことが重要です。例えば、「昨今の市場動向を鑑み、長期的な視点でのデジタルトランスフォーメーションを推進するため、IT人材を5名採用する」といった具体的な目標設定が効果的です。
先ほどの例に倣えば、次のような目標を設定することが有効になります。
- 技術職5名、営業職10名を確保する
- リーダー候補として、3年以内にマネジメント職を担える人材を採用する
- 業界特有のスキルを持つ学生を優先的に確保する
また、数値目標に加えて、スキルや資質の要件も具体化します。たとえば、営業職では「コミュニケーション能力が高く、チームで成果を出せる資質を持つ」といった要件を設定することで、選考基準を明確にできます。これにより、採用プロセス全体で一貫した評価が可能となり、ミスマッチの発生を防ぎます。
ペルソナに落とし込み定義する
採用計画の次のステップは、「理想の候補者像」を具体化することです。単なるスキルや経験だけでなく、その人物の価値観や志向性まで踏み込んで定義することで、より的確なアプローチが可能になります。
- スキル:理系出身でプログラミングスキルを持つ学生
- 性格:地道に努力を続けられる粘り強さ
- 価値観:挑戦を恐れず、新しい環境で成長を目指す姿勢
ペルソナを設定することで、募集要項の作成や選考基準が明確になります。また、学生側に対しても、企業の求める人材像が伝わりやすくなるため、応募者とのミスマッチが軽減されます。
採用プロセスの設計
採用プロセスの明確化は、新卒採用のスムーズな進行を支える基盤です。プロセス全体を設計する際には、以下のようなステップを考慮しましょう。
募集要項の作成
必要なスキルや資質を明確にし、ターゲット層に刺さる内容を盛り込んだ募集要項を作成します。
書類選考の基準設定
学歴やスキルだけでなく、応募者の価値観や志向性を評価するための基準を設けます。これにより、企業文化にマッチする人材を見極めやすくなります。
面接内容の標準化
面接では、全応募者に対して同じ質問を用いることで、公平性と比較可能性を確保します。たとえば、「チームで目標を達成した経験」や「逆境を乗り越えたエピソード」など、能力を測定できる質問を設定します。
内定者フォローアップ計画の策定
内定後のフォローアップは、早期離職を防ぐための重要な施策です。内定者懇親会や、先輩社員との交流イベントを実施することで、入社への安心感を醸成します。
選考の標準化
選考プロセスの公平性を確保するためには、評価基準を標準化することが不可欠です。選考基準を統一することで、応募者の能力を客観的に評価でき、面接官ごとの評価のばらつきを抑えることができます。
たとえば、以下のような評価項目を設定し、数値化することが有効です。
- コミュニケーション能力(10点満点)
- チームワークスキル(10点満点)
- 問題解決能力(10点満点)
さらに、選考プロセスの透明性を高めることで応募者に対する信頼感を向上させることも可能です。企業が応募者一人ひとりを大切にしているという姿勢が伝われば、内定辞退率を下げる効果も期待できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では、新卒採用の目的に関連し、メリット・デメリットや他の採用手法との目的の違い、目標達成に向けた計画の立て方についても詳しく紹介してまいりました。
新卒採用は、企業の未来を担う人材を確保し、組織の成長を支える重要な取り組みであり、様々な目的を持って行われる採用形態であることがおわかりいただけたと思います。
また、どの成功には自社における新卒採用の目的を明確にし、採用活動を計画的かつ戦略的に進めることが求められます。
本記事を参考に、自社にとって新卒採用が本当に必要なのか、実施するとすればどういった目的で行うかを深く検討し、長期的に成果を上げられる新卒採用を実現させてください。
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