こんにちは。digireka!HR編集部です。職業経験の不足等から就職が難しい求職者に対し、一定期間の試行雇用を行う「トライアル雇用」という制度があります。労働者の適性を確認したうえで常用雇用へと移行できるため、ミスマッチを回避できる手段として注目されています。
今回はトライアル雇用について、制度の説明からメリット・デメリット、助成金の種類や導入の流れまで詳しく解説していきます。
トライアル雇用とは
トライアル雇用とは、一定の要件を満たす求職者に対し、3か月間の期限付きで雇用する制度です。就業経験の不足や長期ブランク等により就職が困難な求職者に対し、3か月の就業機会を与えることで正規雇用につなげることを目的としています。厚生労働省とハローワークが主体となっており、2003年4月からトライアル雇用助成金制度を開始しています。
トライアル雇用と試用期間の違い
実施期間
試用期間とは、長期雇用を前提に締結する雇用契約です。トライアル雇用の期間は3か月間と規定されているのに対し、試用期間は1年以内であれば自由に設定でき、一般的には1~6か月程度となっています。
解雇のハードル
試用期間は本採用を前提として雇用するため、簡単には解雇できません。契約を終える場合は通常の解雇と同様の手続きが必要となります。一方でトライアル雇用は有期雇用契約であるため、企業側が納得しなければ自由に契約終了できます。
トライアル雇用の対象者
トライアル雇用の対象となる求職者は、厚生労働省によって以下のように定められています。次のいずれかの要件を満たしていればトライアル雇用が適用されます。
② 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている※1
③ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業※2に就いていない
期間が1年を超えている
④ 紹介日時点で安定した職業に就いておらず、55歳未満である※3
⑤ 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※4
※1 パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
※2 期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること
※3 ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている方
※4 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者
参照:厚生労働省『「トライアル雇用」に応募してみませんか?』
トライアル雇用を行うメリット
ミスマッチを回避できる
トライアル雇用では実際の業務を通じて、労働者の適性を見極めることができます。書類上では職務との相性が良いように見えても実際は合わないケース、あるいは逆に、就業経験は無いものの呑み込みが早く戦力になりやすいケースもあります。3か月間で適性を判断してから採用につなげられるため、ミスマッチを防ぐことができます。
人材を確保しやすい
トライアル雇用は3か月間の期限付きであるうえ、経験者だけでなく未経験者も対象となることから、契約終了のハードルを下げつつ広範な求職者にアプローチすることができます。うまくマッチすれば会社の人材不足を補い、有用な人材を低リスクで集めることができるでしょう。
採用コストを削減できる
トライアル雇用を導入した企業には、国から助成金が支給されます。一般的な採用活動では広報活動や説明会実施により多くの支出があるのに対し、トライアル雇用では助成金を人件費に充てるなどしてコストを大幅に削減できます。
トライアル雇用を行うデメリット
人材育成の手間がかかる
トライアル雇用は就業経験が少ない人や長期ブランクがある人を対象としているため、通常の中途採用よりも人材育成に時間や手間がかかる可能性があります。職種によっては現場の負担が膨らみ、戦力になるまで長期間を要する恐れがあります。
手続きが煩雑
トライアル雇用を導入するには、所定の手続きを踏む必要があります。詳しい内容については後述しますが、計画書類や助成金申請書類の準備が必要となるため、一定の時間的・人的コストが発生します。
トライアル雇用助成金とは
トライアル雇用助成金とは、トライアル雇用を導入した事業主に国から支給される奨励金です。対象者や労働時間によって4つのコースが設けられています。
一般トライアルコース
一般トライアルコースは、職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者に対するトライアル雇用を助成するものです。主な受給条件は以下の通りです。
・安定した職業に就いている
・自ら事業を運営または役員に就いていて、1週間当たりの実働時間が 30 時間以上
・学校に在籍している
・トライアル雇用期間中
(2) 求職者が次のいずれかに該当する
・紹介日前2年以内に、2回以上離職又は転職を繰り返している
・紹介日前において離職している期間が1年を超えている
・妊娠、出産又は育児を理由として離職した者であって、紹介日前において安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
・紹介日において、ニートやフリーター等で55歳未満である
・紹介日において就職支援に当たって特別の配慮を有する次のいずれかに該当する
(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)
(3) 雇入れの条件
・ハローワーク・紹介事業者等に提出された求人に対して、ハローワーク・紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
・1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度であること
受給額は、支給対象者1人につき月額4万円(対象者が母子家庭の母あるいは父子家庭の父の場合月額5万円)で、最長3か月間支給されます。
障害者トライアルコース
障害者トライアルコースは、就職が困難な障害者に対するトライアル雇用を助成するものです。主な受給条件は以下の通りです。
次の[1]と[2]の両方に該当すること
[1]継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している
[2]障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のいずれかに該当する
・紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する
・紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある
・紹介日前において離職している期間が6か月を超えている
・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
(2)雇入れの条件
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
受給額は支給対象者1人につき月額4万円で、最長3か月間支給されます。特に精神障害者の場合は、1人あたり月額8万円を最長3か月間支給後、1人あたり月額4万円を最長3か月間支給されます(雇用期間は最長6か月)。
障害者短時間トライアルコース
障害者短時間トライアルコースは、継続雇用を前提として障害者を試行的に雇用する事業主を助成するものです。主な受給条件は以下の通りです。
継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、障害者短時間トライアル雇用による雇入れについても希望している、精神障害者または発達障害者
(2)雇入れの条件
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・3か月から12か月間の短時間トライアル雇用をすること
受給額は支給対象者1人につき月額4万円で、最長12か月間支給されます。
若年・女性建設労働者トライアルコース
若年・女性建設労働者トライアルコースは、若年者(35 歳未満)または女性の建設技能労働者に対するトライアル雇用を助成するものです。主な受給条件は以下の通りです。
・トライアル雇用の開始日時点で35歳未満または女性
・主として建設工事現場での現場作業に従事または施工管理を行う者(設計、測量、経理、営業などに従事する者は対象外)
(2)対象事業主
・雇用保険の適用事業主である
・雇用保険法施行規則によるトライアル雇用助成金(一般トライアルコース又は障害者トライアルコース(障害者短時間トライアルコースは除く))の支給決定を受けるものである
・雇用管理責任者を選任している
受給額は支給対象者1人につき月額4万円で、最長3か月間支給されます。
トライアル雇用の流れ
参照:厚生労働省『トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内』
①ハローワークにトライアル雇用求人を申し込む
求人票を作成しハローワークに申し込みます。その際、助成金受給の希望も伝えます。
②面接
ハローワークから条件に合致する応募者を紹介されるため、面接を行います。書類選考はありません。
③採用決定後、有期雇用契約を結ぶ
労働者に雇用契約書の内容を説明し、合意の上で契約を結びます。
④トライアル雇用開始
雇い入れ日から2週間以内に、ハローワークに「トライアル雇用実施計画書」を提出します。
⑤常用雇用の判断をする
雇用を継続しない場合、トライアル雇用終了予定日の30日以上前に「雇止め予告通知書」を労働者に渡します。30日以上前に解雇予告ができない場合は、労働者に対して解雇予告手当を支払う必要があります。
常用雇用に進む場合、トライアル雇用終了後に自動で継続することはできないため、労働者と新たに雇用契約を結びます。
⑥トライアル雇用終了
トライアル雇用終了後、2か月以内に「結果報告書兼支給申請書」をハローワークもしくは労働局に提出します。助成金申請もこの書類で行います。
トライアル雇用から正社員になる割合
厚労省によると、トライアル雇用後に正社員として常用雇用となる割合は、全体の約8割です。トライアル雇用を経た求職者のほとんどが本採用に至っていることから、多くの企業がトライアル雇用を人材確保の手段として積極的に利用していることが分かります。
まとめ
トライアル雇用を導入することで、採用コストを抑えつつ、労働者の適性を見極めて採用判断を行うことができます。ミスマッチを回避できるという利点がある一方、人材育成や申請書類作成の手間がかかるという側面もあります。導入の際は、制度の仕組みを正確に理解したうえで、適切な運用を心掛けましょう。
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