売り手市場が続く採用市場において、「求職者が思うように集まらない」「自社の求める人材が確保できていない」など、採用がうまくいっていないと感じている企業様も多いのではないのでしょうか。
その際には、現在行っている採用活動をフローごとに見直し、うまくいかない原因を明確にすることが大切です。
- どのような点に着目して採用活動を見直せば良い?
- どのような対策を講じる必要があるのか?
など、さまざまな疑問に答えるべく、本記事ではフローごとに「採用がうまくいかない原因」をご紹介します。また、それに対し取り組むべき対策も、企業の成功事例と合わせてご紹介します。
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2024年採用市場の現状
採用活動を見直す上では、現在の採用市場について理解を深めることが必要不可欠です。
下のグラフは、令和5年度までの求人数、求職者数、求人倍率の推移を示したものです。
引用元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」
このグラフによれば、コロナ禍の影響で一時的に減少しましたが、その後は1を超え続けています。
この数字は求職者よりも求人が多い状況を示しており、全産業で相当数の求人が出ていることを示唆しています。つまり、採用市場は依然として「売り手市場」であると言えます。自社が求める優秀な人材を確保するためには、効果的な採用活動が欠かせません。
一方、求人が増えると、条件の良い仕事への転職を考える人も増える傾向にあるため、今後も転職市場は活気づくでしょう。より好条件を求める優秀な人材が転職を考えるケースも多いため、各企業の採用活動の質がそれぞれの人材の質を定めると言えます。
原因①採用計画の設計時
それぞれの採用フローごとに、採用がうまくいかない原因・それに対する対策を紹介します。
採用活動がうまくいってない時は、基盤となる採用計画を見直す必要があります。
その際、うまくいかない原因としては以下の3点が考えられます。
- 求める人物像が明確にできていない
- 適切な採用手法を選択できていない
- 期間や予算、人員の計画が非現実的になっている
それぞれの詳細と、取り組むべき対策について、詳しく説明します。
求める人物像が明確にできていない
採用計画を立案する際には、まず、どのような人材が必要か、人材要件を明確にすることからスタートします。これには、採用する部門のニーズに基づいて人材要件を決定する必要があります。
この段階で、採用部門と人事部門との間での適切な調整が欠けていると、後続の採用活動も的を外したものになりかねません。その結果、「必要な人材が最終的には採用できなかった」「ターゲットとなる人材からの応募が得られなかった」という問題が生じる可能性があります。
|取るべき対策
採用計画を策定する際には、現場社員と人事担当者が緊密に連携し、必要な人材についての理解を深めておくことが重要です。
自社の経営戦略・事業計画、またそれに合わせた採用戦略に沿って、自社がどのような人材を必要としているのか、改めて明確にしましょう。
「コミュニケーション能力に優れている」「経験が豊富である」などの抽象的な定義・スペックだけではなくて、自社の仕事内容に合わせた具体的な定義を設けることが大切です。
この部署で活躍してもらうためには、このような要素が必要不可欠だ、という要件を明確にして、求める人材ペルソナを定義することが大切です。
適切な採用手法を選択できていない
上で述べた、求める人物像に応じて、適切な採用手法を選択する必要があります。
採用手法は多岐にわたりますが、例えば以下が求職者を集める手法の一例です。
- 求人広告を紙媒体の求人本に掲載する
- 求人ナビサイトに求人情報を掲載する
- 自社のウェブサイトに採用情報を掲載する
- ダイレクトリクルーティングを行う
それぞれの手法には利点と欠点があり、出会える求職者も異なります。
つまり、適切な採用手法の選択を誤ると、求める人材に十分にアプローチできない可能性があります。
|取るべき対策
まず、各採用手法の利点と欠点を理解しましょう。企業が求める人物と出会える可能性の高い、適切な採用手法を選択することが大切です。
たとえば、自社がベンチャー企業であれば、ベンチャー企業がリストアップされた求人サイトを利用すると良いでしょう。そうすることで、そのサイトを利用しているのはベンチャー企業志向の人材であり、求める人物が応募してくれる可能性が高まります。
また、スキルのあるエンジニアを探している場合には、ウェブ媒体や自社での勉強会などの集客方法も考えられます。
期間や予算、人員の計画が非現実的である
人材要件を確定した後は、必要な人材をいつまでに何人、どのような手法で採用するかを計画します。
この際、採用に必要な予算や期間、人員の割り当てについて現実的に考慮しましょう。採用するポジションや人材によって、適切な採用手法が異なります。新卒者や技術者、中堅事務職など、それぞれの採用には異なる求人媒体や人材紹介業者が適しています。
これに対応するためには、限られた予算や期間、人員の中で完璧に対応することは難しいでしょう。採用活動がうまくいかないケースには、非現実的な計画を立てていたものがとても多いです。
|取るべき対策
- 過去の採用活動の記録を確認し計画の欠陥を洗い出すこと
- 事前に現場社員へのヒアリングを十分に行うこと
が大切です。
特に、現場社員へのヒアリングによって、人事担当者との意識のすり合わせを行うことができるため、より円滑に採用活動を進めることができるでしょう。
採用活動の始めに規定する採用ペルソナに、そうした現場の声を反映させることでより効率的な採用活動が行えるでしょう。
採用ペルソナとは?作り方や注意点、活用事例も紹介!
原因②採用活動スタート時
採用計画を定め、実際に求人募集を開始した際には、「応募者がうまく集まらない」「集まっていても自社が求める人材がいない」などの問題を抱えることが多いです。
その原因としては、以下の3点が考えられます。
- 母集団の形成がうまくいっていない
- 求人内容の提示が適切でない
- 競合他社の分析ができていない
母集団の形成がうまくいっていない
優秀な人材を確保するためには、求職者の母集団形成が欠かせません。
母集団が小さいと、良質な人材・自社が求める条件にあった人材・自社で働く意欲の強い人材を見つけるのが難しくなります。母集団が小さい結果として、求職者の質が下がってしまいます。
採用市場が買い手市場であった数年前までは求職者が有利な状況でしたが、今では量と質の両方が必要です。どちらかが欠けると、採用が難しくなります。
|取るべき対策
採用担当者やリソースが不足している企業では、母集団形成のための戦略が不十分な場合がよく見られます。特に企業の知名度が低い場合は、単にホームページや求人広告で待っているだけでは効果が限られます。特に専門職種や人気のある人材を採用する場合は、積極的なアプローチが必要です。ダイレクトリクルーティングやスカウトなど、候補者に企業からアプローチする方法も検討すべきです。
具体的には以下の点に注目すると良いでしょう。
・採用ペルソナを明確にする
・自社に適した採用手法を選択する
・採用代行を活用する
・振り返り/改善を行う
中途採用の母集団形成手法8選|手順やポイントを解説
求人内容の提示が適切でない
求職者にとって魅力的な求人情報でなければ自社への興味を持ってもらうのは難しいです。
たとえば、単に高い年収を提示しても、その数字が本当に現実的かどうかは見ただけではわかりません。求職者は、基本給や残業代などについて、正確な情報を求めているでしょう。
また、文法の誤りや暗い写真、社員が少なく見える写真など、求人内容の魅力を損なう要因はさまざまあります。特に写真は第一印象を左右する重要な要素であるため、社内の雰囲気がよく伝わる写真でなければ、求職者は離れてしまいます。
|取るべき対策
求人情報に用いる数字は業界平均などと比べたものを提示しましょう。そうすることで、求職者は競合他社と自社の比較を行えます。
また、企業の文化や価値観、ビジョンなど、独自の要素を強調すると良いです。簡潔で印象に残るキーワードを使うことも重要です。写真は明るいものを選び、社員の写真を多く掲載すると求職者からの親近感が得られます。
最近では会社概要や採用情報を求職者向けに示す「採用ピッチ資料」を作成する企業も多いです。採用ピッチ資料の活用により、企業の認知拡大に繋がる、人材とのマッチ度の向上に繋がる、採用コストの削減に繋がるなどのメリットが得られます。
【事例有】採用ピッチ資料20選|作成フローやメリットもご紹介
競合他社の分析ができていない
求人内容、広告において、自社の良い面をただ伝えるだけでは、求職者の心には届きません。
求人倍率が高く安定しており、「売り手市場」である採用市場において、優秀な人材は競合他社との取り合いになります。
競合他社がどのような強みを持っているのか、どのような戦略で採用活動を行っているのかを理解しないまま、闇雲に自社の宣伝を行っていても、求職者に正しく自社の魅力を理解してもらえないことが多いです。
|取るべき対策
採用競争は他社との競争だけでなく、事業競争も含まれます。まずは、どの企業が採用競争のライバルなのかを考え、分析をしましょう。
他社を分析する際には、次の2つのポイントに注目して比較してみましょう。
- 福利厚生と給与水準
- 仕事の進め方や企業文化
これらの要素は求職者の入社決定に大きく影響するため、競合他社の情報収集が重要です。
事業競争に関しては、自社の営業担当に情報を取得することも有効です。
原因③選考時
選考時には、面接やグループディスカッションを通して、求職者のスキル・性格を見抜く必要があります。
選考がうまくいかない理由としては、以下の2点が挙げられます。
- 選考プロセスが長引いている
- 面接官のスキルが不足している
選考プロセスが長引いている
選考プロセスが遅延してしまう原因は、応募から採用決定までの手続きが多すぎることや、判断に時間がかかり次の選考までに間隔が空いてしまうことが考えられます。
このような遅延が発生すると、求職者には「連絡がないとは、不採用ということ?」といった不安を抱かせ、求職者にとってスムーズな採用プロセスとは程遠いものとなります。また、他の企業が同じ求職者にアプローチする機会を提供してしまう可能性もあります。
|取るべき対策
まずは、応募から採用決定までの手続きを再検討しましょう。一連の手続きを効率化し、1度に見極められるかどうかや、日数を短縮できないかを検討することが重要です。リードタイムが短いことで、優秀な人材をすぐに採用することができます。
もし判断が遅れる原因がジャッジスピードにある場合は、再度採用責任者と要件を再確認し、激しい市況状況を考慮に入れ、判断のフローを見直すことを検討してみましょう。
面接官のスキルが不足している
選考において、面接は求職者と密にコミュニケーションを取ることができる貴重な機会です。
その際、面接官を担当する社員は「求職者のスキルや性格・人柄を見極めること」と「自社の魅力を正しく伝えること」の2つの役割が求められます。
ですが、面接官が意識するポイントを間違えていたり、偏った判断を下してしまったりした場合、適切に求職者を判断できず、自社とマッチした人材を採用できなくなってしまいます。
|取るべき対策
面接官をする際の準備として、以下の点を義務付けましょう。
- 面接官としての心構えの理解
- 採用要件の理解
- 面接方法・評価基準の理解
- 履歴書・エントリーシートの読み込み
- 面接シナリオの確認
- 面接評価シートの確認
これらの準備に加えて、自社内で質問例を作成しておいたり、面接官トレーニングを実施したりすると、面接官の質を一定に保つことができるでしょう。
面接官が人材を見抜くやり方は?15の質問例やタブー、ポイントまとめ
原因④内定を出す時
内定を出す際に潜む、採用がうまくいかない原因は以下の2つが考えられます。
- 内定の連絡が遅い
- 内定の理由や意図を説明できていない
内定の連絡が遅い
最終面接を受けた求職者は、早く結果を知りたがっています。新卒の場合は、同時に何社も受験する学生が多いでしょうし、中途の場合は、より良い条件の求人を探して、早い結果通知を望んでいます。
そうした状況の中で内定通知が遅れてしまうと、優秀な人材が他社に取られてしまったり、入社意欲が下がってしまいます。
|取るべき対策
最終選考が終了したら、内定までのプロセスを最速で進めるための内部調整をしましょう。理想的なのは、選考が始まる時点で、内定までのスケジュールを明確に提示できることです。
選考がどのようなスケジュールで進むのか、何日後に結果を通知するのかを明確に伝えることで、求職者は他社の選考の受け入れや、中途採用の場合は現職との調整を考える際に役立ちます。求職者目線で選考を調整し、スケジュールを明確に伝えることで、採用の成果も変わっていきます。
内定の理由や意図を説明できていない
内定を得た後、内定者が「本当にこの企業で良いのだろうか」と不安を感じると、内定辞退のリスクが高まります。内定までのプロセスにて自社を知ってもらう機会が少なすぎた場合や、内定通知の担当者の熱意が不足していると感じられる場合など、内定者の心が揺れ動く可能性があります。
なぜ企業が自分を必要としているのかがわからなくなってしまうと、内定者はいわゆる「内定ブルー」の状態に陥りかねません。
|取るべき対策
まず、内定を出した理由や、候補者にとって入社してほしいと考える会社の意向を明確に伝えましょう。これにより、候補者は自身の強みをさらに理解する機会になり、期待されていることに対する満足感や興奮を感じるでしょう。
企業側が率直に熱意を伝えることは、後の入社前の辞退などのリスクを軽減するのに役立ちます。
原因⑤内定後のフォロー時
内定を出しフォローをする際の企業の悩みとして、「内定辞退率が高い」などが挙げられます。
この原因としては、以下の2点が挙げられます。
- 自社の魅力を伝えきれていない
- 内定者同士の交流が少ない
自社の魅力を伝えきれていない
内定後のフォロー時には、人事部との面談や内定者懇談会などを行う場合が多いでしょう。
その際、「質問や相談があればなんでも聞いてください」と伝えるだけの受け身のスタンスでフォローをしていると、内定者は積極的な魅力づけをしている他の企業に惹かれてしまうことがあります。
特に、人事部など限られた社員から連絡をするばかりのフォローだと、社内の実際の働き方ややりがいを知ってもらう機会が少なくなってしまいます。
|取るべき対策
採用担当者やメンターなどが、積極的に内定者とコミュニケーションを取ることが重要です。定期的に連絡を取り合い、候補者が不安や悩みを気軽に相談できる関係を築くことが理想です。
LINEやメッセージツールなどの使いやすいコミュニケーションツールを活用し、親密なコミュニケーションを取ることが望ましいです。
内定者同士の交流が少ない
内定者にとって、同期にどんな人がいるかは重要な関心事の1つです。同期の情報が不明なまま他社の情報が入ると、不安になり、「他にもっと合った会社があるのではないか」と考えることがあります。この不安は、新卒採用だけでなく、中途採用でも同様です。
|取るべき対策
内定を出したら、可能な限り早めに、他内定者との交流の機会を設けることを検討しましょう。
現役社員も交えた懇親会などを開催すると、仕事の様子を想像することができ、より入社意欲を高められるでしょう。
採用を抜本的に変える外部サービスの活用
採用活動における課題は、競争が激化する市場環境の中では、企業独自のリソースだけでは限界がある場合があります。
そこで注目されるのが、採用活動を支援する外部サービスの活用です。ここでは、「採用代行サービス」と「採用コンサル」を取り上げ、それぞれの特徴とメリットについて詳しく解説します。
採用代行(RPO)サービス
採用代行サービスは、採用活動の一部または全てを外部の専門業者に委託するサービスです。具体的には、以下のような業務をカバーします。
- 求人情報の作成と配信:ターゲットに合った魅力的な求人情報を作成し、適切なプラットフォームに配信します
- 応募者管理:エントリーから選考までのプロセスを効率化し、管理負担を軽減します
- スカウトやヘッドハンティング:企業に適した人材を積極的に探し、接触します
|採用代行(RPO)の導入メリット
専門家が蓄積したノウハウを基に進めるため、母集団形成や選考プロセスの効率化が可能となります。さらに、採用市場の動向に精通したプロの手によって、最新のテクノロジーを活用したスピーディーな採用活動が実現します。
採用代行サービスは、特に採用スケジュールに余裕がない場合や、内部リソースだけではカバーしきれない場合に大きな力を発揮します。効率化されたプロセスや幅広い専門知識により、他社との差別化を図ることができるのです。
採用代行(RPO)とは? サービス15社・選ぶポイント 業務範囲を解説
採用コンサル
採用コンサルは企業ごとの状況に応じたカスタマイズサービスが魅力です。採用戦略の策定から実施までを支援し、特定の課題に焦点を当てて解決策を提案します。
- 採用戦略の設計:求める人物像やターゲット層を明確にし、採用活動全体の計画を立案します
- 採用チャネルの選定:SNS、求人媒体、イベントなど、効果的なチャネルを選択します
- 採用ブランディング:求職者に対して企業の魅力を伝えるブランディング戦略を構築します
|採用コンサルの導入メリット
採用コンサルの魅力は、短期的な成果だけでなく、長期的な視点での採用改善を目指せる点です。単なる採用業務の効率化にとどまらず、採用活動全体を見直すきっかけを与え、自社の価値を最大限に発揮する方法を提案します。
採用コンサルティングとは? サービス内容や費用、選定ポイントまで徹底解説!
外部サービスを選ぶ際のポイント
外部サービスを選択する際には、次の点を考慮するとよいでしょう。
- 自社の課題を明確化する:当然、サービスによっては丸投げすることも可能ですが、費用対効果の観点からおすすめはできません。どの部分を委託したいのか、どのような成果を求めるのかを明確にします。
- 提供企業の実績を確認する:類似業種・規模の企業での成果が参考になります。
- 継続的なフォロー体制を確認する:採用後のフォローまで対応しているかどうかがポイントとなります。
外部サービスを賢く活用することで、採用活動を劇的に変える可能性が広がります。
導入の是非を含め、自社に合ったサービスを選び、採用競争に勝つための一歩を踏み出しましょう。
まとめ
この記事では、採用活動がうまくいかない原因について、フローに沿って紹介し、取り組むべき対策を解説しました。
これらを参考に、自社の採用活動で改善できるポイントを探してみることで、より優秀な人材の確保に繋がります。
ぜひこの記事を参考に、一つ一つのフローを見直してみてください。
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