「時短勤務って具体的にはどんな内容?」
「誰が対象者?」
「賃金の計算はどうやってするの?」
上記のような時短勤務に関する悩みは尽きないと思います。
本記事では時短勤務の具体的な内容から対象者、計算方法まで詳しく説明しています。
この記事によって、悩みや不安が解決されれば幸いです。
時短勤務とは
時短勤務とは、1日あたりの労働時間を通常よりも短くした勤務形態のことです。時短勤務制度は育児・介護休業法により整備自体が義務づけられています。
時短勤務制度の整備が義務づけられているのは「育児」と「介護」のどちらかを理由とする場合です。
時短勤務制度の具体的な内容
時短勤務制度の具体的な内容は以下の通りであると定められています。
また、時短勤務の申請締め切りは企業が独自に決定することが可能です。
基本条件 | 基本条件の適用が難しい場合(いずれか) | |
育児 | 労働時間を6時間/日に変更 | フレックスタイム制の適用 |
始業or終業の時間を変更 | ||
保育施設運営などの供与 | ||
前提条件 | 前提条件に追加適用(いずれか) | |
介護 | 2回以上の利用ができる | 所定労働時間の短縮 |
フレックスタイム制 | ||
始業or終業の時間を変更 | ||
介護サービス利用を助成する制度※ |
※2回以上の利用ができることは必須条件にならない
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(抄)(平成3年労働省令第25号)
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、始業・終業の時間を従業員が決められる制度のことです。企業によって決められた労働時間を満たさなくてはならない、という制約はありますが、始業・終業の時間が自由になるためプライベートの時間を創り出すことが比較的容易となります。
時短勤務制度に関わる「育児・介護休業法」という法律
時短勤務制度に関係する法律は「育児・介護休業法」です。
(正式名:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
この法律(育児・介護休業法23条)で、育児や介護について条件を満たす従業員に対して時短勤務制度を適用できるように規則整備をしなければならないということが定められています。
時短勤務制度を適用する対象者
先述したように、条件を満たす従業員が育児や介護を理由とする場合、時短勤務制度を適用する義務があります。
では、その条件とはどんなものなのでしょうか。以下で育児、介護それぞれについて解説します。
育児を理由とする場合に時短勤務制度を適用する対象者
育児を理由とする場合、以下の条件をすべて満たすことが時短勤務制度を適用するために必要です。
・3歳に満たない子を養育する労働者であること
・育児休業中でないこと
・1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
・日々雇用される者でないこと
・労使協定により適用除外とされていないこと(※)
・雇用期間が1年に満たない
・1週間の所定労働日数が2日以下
・業務の性質や体制により、時短勤務制度が難しいと客観的に判断される者
介護を理由とする場合に時短勤務制度を適用する対象者
介護を理由とする場合、以下の条件をすべて満たすことが時短勤務制度を適用するために必要です。
・日々雇用される者でないこと
・労使協定により適用除外とされていないこと(※)
※労使協定によって適用を除外できるのは、次のいずれかの条件に当てはまる者です。
・雇用期間が1年に満たない
・1週間の所定労働日数が2日以下
時短勤務制度の適用期間
時短勤務制度の適用期間について、育児と介護それぞれについて解説します。
〈育児〉
育児を理由とする場合の適用期間:子供が3歳になるまで
育児を理由とする場合「子供が3歳になるまで」が適用期間になります。ですが、子供が小学校始期に達するまで必要な措置(時短勤務など)を講ずるように企業は努めなければならないと育児・介護休業法(24条)によって規定されています。
〈介護〉
介護を理由とする場合の適用期間:3年以上
介護を理由とする場合「3年以上」が適用期間となります。「3年以上」という規定のみ存在するため、具体的な適用期間は労使間での調整が必要です。
時短勤務制度にまつわる注意点
時短勤務制度について注意する点は「不利益取扱いの禁止」「残業の免除」の2つです。それぞれのポイントについて紹介していきます。
不利益取扱いの禁止
育児・介護休業法の第23条において、時短勤務をした労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないと規定されています。不利益な取扱いの具体例としては、解雇や不当な減給、契約内容の変更を強要するといったものが挙げられます。
育児・介護休業法 第23条の2
事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
引用:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
残業の免除
時短勤務制度を適用する対象者から育児や介護を理由に残業の免除申請がされた場合、企業は拒否することが基本的にはできません。
免除を希望する従業員は、免除開始日の1か月前までに書面などによって請求をする必要があります。そして、1回の請求につき1か月以上1年以内の期間に対して残業の免除を求めることができます。また、その回数に制限はありません。
時短勤務制度によるメリット
時短勤務制度を利用しやすい環境を作る、手厚い制度にするといった努力をすることで企業が得られるメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
人材の流出を防ぐ
やはり、優秀な人材の流出を防ぐというメリットが大きいでしょう。業務のノウハウを持っている優秀な人材が時短勤務制度が最低限のものだったせいで辞めてしまった、となれば大きな損失に繋がります。同レベルのスキルを持った人材を育成するにしても採用するにしても、コストがかかることは明白でしょう。
人材の獲得に繋がる
優秀な人材の流出を防ぐだけでなく、人材の獲得に繋がるというメリットもあります。時短勤務制度という従業員に寄り添った制度が充実しているというのは、企業の魅力にも繋がるのです。
従業員からの信頼を得ることができる
また、従業員からの信頼を得ることができる可能性もあります。時短勤務を推奨している企業は従業員の味方だと感じることができるからです。
時短勤務制度によるデメリット
時短勤務制度によって得られるメリットもあればデメリットも存在します。では、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
人手が減る
時短勤務によってその従業員の稼働は減るわけなので、人手が減るというデメリットがあります。そのため、業務の進行が通常に比べて遅くなるという影響が考えられるでしょう。その分、他の従業員にしわ寄せが生じてしまうことも考えられます。
従業員のモチベーション低下
時短勤務をしている従業員・していない従業員、双方のモチベーションが低下するデメリットもあります。時短勤務をしている従業員は、時短勤務をしているだけ賃金は低下するためモチベーション低下に繋がる可能性があるのです。また、時短勤務をしていない従業員が他従業員の分まで業務を負担しなければならない場合、そのことがモチベーション低下に繋がる可能性もあります。
時短勤務制度中の賃金について
時短勤務制度中の賃金には、ノーワークノーペイの原則が適用されます。ノーワークノーペイの原則とは「働いていなければ賃金を払う必要はない」という原則のことです。
したがって、時短勤務中の賃金は減少すると考えて良いでしょう。
また育児を理由に時短勤務をする場合、社会保険料の負担軽減が行われます。
そのためには「育児休業等終了時報酬月額変更届」、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」といった書類を従業員が作成、企業が日本年金機構に提出することが必要になります。
企業が負担する額もそれに応じて減少するため、従業員のためにも上記のような書類の存在を企業から伝達することが重要です。
時短勤務制度中の賃金計算
では、時短勤務制度中の賃金はどうやって計算するのでしょうか。
以下で順に説明します。
② 1か月の所定労働時間(1日の所定労働時間×1か月の勤務日数)を求める
③ 該当する従業員が実際に働いた時間を調べる
④ 実労働時間(③)を所定労働時間(②)で割る
⑤ ①で調べた基本給に④で求めた数値をかける
実際に上記の流れで計算してみましょう。以下の場合を想定します。
基本給:25万円
1日の所定労働時間:8時間
完全週休2日制、6時間の時短勤務
② 1日の所定労働時間は8時間。完全週休2日制であり、その月の勤務日数は22日だった。
したがって、8時間×22日=176時間
③ 該当する従業員は22日勤務し、6時間の時短勤務だった。
したがって、6時間×22日=132時間
④ ③÷②=132時間÷176時間=0.75
⑤ ①×④=250000×0.75=187500
これらから、18万7500円が時短勤務中の賃金だということがわかります。
まとめ
今回は時短勤務制度について解説しました。
時短勤務制度は法律で整備が義務化されている、育児や介護をする従業員のための制度です。従業員に寄り添った形で時短勤務に関するルール作成を行うことが時短勤務制度を円滑に進めるコツでしょう。
本記事が時短勤務制度に対する疑問や不安の解消に繋がれば幸いです。
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