「法改正の影響で社会保険のなにかが変わるらしい」
「社会保険に入っていないけど、うちの企業大丈夫?」
このような疑問、悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
本記事では、社会保険への加入条件から法改正による影響、企業側から見たメリット・デメリットまで解説します。
そもそも社会保険とは
社会保険とは、以下に挙げた保険すべての総称です。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険(労働者災害補償保険)
狭義では「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つを社会保険と呼ぶことが一般的です。本記事ではこの3つの保険に絞って解説します。
健康保険とは
健康保険とは、けがや病気、出産、死亡といった事態に備えるための保険制度です。病院での治療費負担が3割に抑えられた経験があるのではないでしょうか。これは健康保険に加入しているからです。乳幼児や70歳以上であれば、さらに負担率が低く設定されています。
厚生年金保険とは
厚生年金保険とは、企業に勤める従業員が加入する年金のことです。
20歳以上になれば、国民年金保険に加入しなければなりません。その国民年金に付与される形で厚生年金保険は存在しています。国民年金保険を1階部分だとすれば厚生年金保険は2階部分。厚生年金保険に加入することで保障は手厚いものになります。
介護保険とは
介護保険とは、40歳になると自動的に加入する保険制度です。65歳以上(第1号被保険者)・40歳〜64歳(第2号被保険者、条件付き)の方で介護が必要な場合に費用給付が受けられるというものになります。この介護保険は公的な保険制度であり、民間が提供している介護保険とは異なるので注意しましょう。
正社員の社会保険への加入条件とは
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
この3つの保険それぞれについて加入条件を解説します。
健康保険・厚生年金保険への加入条件
企業が従業員を正社員として雇用することが健康保険・厚生年金保険への加入条件です。しかし、後述の社会保険へ加入義務がある、もしくは加入できる事業所に企業が該当しなければ加入条件を満たしたことにはなりません。
介護保険への加入条件
介護保険へ加入するための条件は年齢です。40歳を超えると介護保険に加入したとみなされ、支払いの義務が発生します。40歳以降は介護保険料を支払い続けなければなりません。
パート・アルバイトの社会保険への加入条件
短時間労働者(パート・アルバイトなど)を社会保険に加入させるためには以下の条件がどちらも必要です。
・月の所定労働時間が正社員の4分の3以上
この条件を満たせば、学生であっても社会保険に加入させる必要があります。
しかし、この条件を満たしていなくても、以下の条件をどちらも満たせば社会保険に加入させなければいけません。
・短時間労働者が社会保険の適用条件を満たしている
法改正により、短時間労働者に社会保険が適用される条件は以下のように変化します。
改正前 | 社会保険の適用条件 |
現在(令和4年(2022年)3月) | ・週の所定労働時間が20時間以上 ・月額88,000円以上の賃金 ・継続して1年以上使用される見込みがある ・学生ではない |
改正後 | 変更点 |
令和4年(2022年)10月~ | ・継続して2か月を超えて以上使用される見込みがある |
令和6年(2024年)10月~ | ・継続して2か月を超えて以上使用される見込みがある |
※勤務期間以外の適用条件は変更なし
社会保険へ加入しなければならない事業所
社会保険(健康保険・厚生年金保険)へ加入しなければならない事業所、というものが存在します。
下記の4つが社会保険(健康保険・厚生年金保険)へ加入義務がある、もしくは加入できる事業所です。
・強制適用事業所
・任意適用事業所
・特定適用事業所
・任意特定適用事業所
〇〇適用事業所という名称からわかるとおり、社会保険が適用される事業所のことを適用事業所と呼びます。
※事業所とは、原則として以下の2点をそろえているもののことです。
・経済活動が単一の経営主体のもとで一定の場所を占めて行われていること
・物の生産、サービスの提供が従業者と設備を有して継続的に行われていること
引用:総務省統計局
以下でそれぞれの適用事業所について詳しく解説します。
強制適用事業所とは
以下の条件のどちらかに当てはまる事業所が強制適用事業所に該当します。
・国、地方公共団体または法人の事業所
・一定の職種において常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所
(一定の職種=製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告工業、教育研究調査業、医療保険業、通信法同業など)
任意適用事業所とは
以下の条件にすべて当てはまる事業所が任意適用事業所になります。
・強制適用事業所ではない
・従業員の半数以上が社会保険の適用事業所となることに同意している
・事業主が申請して厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けている
任意適用事業所の場合、健康保険・厚生年金保険のどちらか1つに加入することも可能です。
特定適用事業所とは
特定適用事業所とは、適用事業所で厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く)の数が常時500人を超える事業所のことです。特定適用事業所であれば、条件を満たす短時間労働者(パート・アルバイトなど)にも社会保険(健康保険・厚生年金保険)を適用する必要があります。
ここで注意したいのが、事業主が同じであれば事業所の数は問わない、という点です。
例
事業所A:常時200人の被保険者 事業所B:常時400人の被保険者
事業所Aと事業所Bの事業主が同じ場合 →特定適用事業所
事業所Aと事業所Bの事業主が異なる場合 →特定適用事業所ではない
※以下の場合で「事業主が同じ」と判断されます。
・法人事務所で法人番号が同一の適用事業所
・個人事務所で現在の適用事業所
また、この特定適用事業所の条件が法改正により以下のように変更されます。
改正前 | 厚生年金保険の被保険者数 (短時間労働者を除く) |
現在(令和4年(2022年)3月) | 常時500人を超える |
改正後 | 厚生年金保険の被保険者数 (短時間労働者を除く) |
令和4年(2022年)10月~ | 常時100人を超える |
令和6年(2024年)10月~ | 常時50人を超える |
任意特定適用事業所とは
任意特定適用事業所とは、以下の条件を満たす事業所のことを指します。
・厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く)の数が常時500人を超えない適用事業所
・労使間で合意が取れている(労使合意)
この場合の労使合意とは、短時間労働者(パート・アルバイトなど)が社会保険に加入することについて以下の人々と合意が取れている状態のことです。
ア. 適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者、70歳以上被用者及び短時間労働者(以下「同意対象者」という。)の過半数で組織する労働組合がある場合は、当該労働組合の同意
イ. アで規定する労働組合がない場合は、同意対象者の過半数を代表する者の同意、または、同意対象者の2分の1以上の同意
引用:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)
特定適用事業所でなくとも、労使合意が達成されれば短時間労働者(パート・アルバイトなど)を社会保険に加入させることが可能となるのです。
社会保険へ加入できないケース
社会保険へ加入しなければならない事業所と従業員の社会保険への加入条件をこれまで解説してきました。ここでは、社会保険に加入できないケースについて紹介します。
健康保険へ加入できないケース
・船員保険の被保険者
・後期高齢者医療制度に加入する75歳以上の人
・所在地が一定しない事業所
・国民健康保険組合の事業所
・臨時的事業の事業所(6か月以内)
・2か月以内の期限を定めて臨時に使用される人
・日々雇い入れられる人で、臨時に使用される期間が1か月を超えない人
・季節的業務に4か月を超えない期間使用される人
・健康保険、または共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
厚生年金保険へ加入できないケース
・船員保険の被保険者
・70歳以上の人
・所在地が一定しない事業所
・臨時的事業の事業所(6か月以内)
・2か月以内の期限を定めて臨時に使用される人
・日々雇い入れられる人で、臨時に使用される期間が1か月を超えない人
・季節的業務に4か月を超えない期間使用される人
社会保険に加入しなかった際の罰則
社会保険に加入しなかった場合、どのような罰則が課される可能性があるのでしょうか。
健康保険法第208条や厚生年金保険法第102条に基づき、以下の罰則が課せられる可能性があります。
・6か月以下の懲役
・50万円以下の罰金
しかし上記のような罰則がすぐに課されるわけではありません。最初は加入勧告や加入指導から行われることが一般的です。そうなってしまった場合、迅速に対応するように心がけましょう。
従業員を社会保険に加入させるための手続きについて
従業員を社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させるためには、日本年金機構へ雇用してから5日以内の申請が必要です。
従業員を社会保険に加入させるために必要な書類
従業員を社会保険に加入させるためには、事業所が以下の書類を日本年金機構へ提出する必要があります。
〈健康保険・厚生年金保険の場合〉
・被保険者資格取得届
〈介護保険の場合〉
・なし
書類を完成させるために、従業員に以下の書類を用意してもらいましょう。
〈健康保険・厚生年金保険の場合〉
健康保険・厚生年金保険の場合、被保険者資格取得届の提出が必要です。この作成のために、以下のいずれかが必要になります。
・年金手帳
・基礎年金番号通知書
・マイナンバーカード
〈介護保険〉
介護保険の場合、加入のために必要な書類はありません。年齢(40歳以上)を基準として被保険者の選定を行っているため必要がないのです。
社会保険に加入するメリット
強制適用事業所でなければ、従業員から「社会保険に入りたい」と言われることもあるかと思います。そこで社会保険に加入することによるメリットを紹介します。
社会保険に加入することで得られる企業側のメリットは、大きく3つです。
・外部に向けて保険体制が整っていることをアピールできる
・保険体制が整っていることで優秀な人材の確保に繋がる
・離職率の低下に繋がる可能性がある
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できることは、従業員にとって安心に繋がります。また従業員からしてみれば、保険料が企業との折半になることで負担減少になることもあるのです。
これらのことから、上記のようなメリットが得られると判断できるでしょう。
社会保険に加入するデメリット
社会保険に加入することで企業側にはデメリットも生じます。それは以下の2つです。
・支出が増える
・業務が増える
社会保険は、従業員と企業の折半で支払われます。(一般的には給料からの天引きという形で折半を行います)
つまり、社会保険に加入している従業員が多ければ多いほど企業の金銭的な負担も増加するのです。また、保険に加入・脱退する際の手続きも業務的な負担になるというのは明らかでしょう。
まとめ
社会保険は万が一に備える保険制度。企業としても財の1つである「ヒト」を守りたいですよね。本記事が社会保険への加入条件に対する理解へ繋がれば幸いです。
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