労働に関連した事務処理や管理業務は日々の業務である且つ、専門知識を要する仕事です。
「毎日やらなければならないのに、自社に知識を持っている人がいない」
「毎日の事務処理に追われて、コアな業務に集中できない」
そう思っている経理担当者、人事担当者の方も多いのではないでしょうか。近年では、そんな担当者の負担を減らし、企業の仕事効率化を図るために労務事務を外部に委託する企業が増えています。本記事では、労務の代行を行うことによるメリット・デメリットや業務内容、サービスを選ぶ際の注意点について説明します。
労務代行(アウトソーシング)とは
労務代行とは企業内の労務事務(企業内の労働に付随した関連業務全般。事務処理や管理業務が一般的。)をアウトソーシング(業務の外部委託)することです。一般的には、以下のような業務が代行可能です。
・労働保険・社会保険業務
・勤怠管理
・納税業務・年末調整業務
・採用業務
業務の効率化や人材不足の補填、担当者の負担軽減といった企業の目的に合わせて、アウトソーシングする業務を決定することが重要です。以下ではそれぞれの業務内容を説明します。
給与計算
給与計算業務には毎月の給与の計算だけでなく税金や社会保険料の控除、残業代やインセンティブ(報酬)の計算が含まれます。給与計算業務を委託すると、主に以下の仕事を代行してくれます。
・社会保険料、税金、その他控除額の計算
・差引支給額の計算
・賃金台帳、振込データ作成
・給与明細書、源泉徴収票発行
給与計算と関連性の高い勤怠管理や納税業務・年末調整業務を同時に委託する企業もあります。
労働保険・社会保険業務
労働保険・社会保険業務の主な内容は以下の通りです。
・社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)に関する手続き
・各種書類の作成、提出
これらは企業が必ず行わなければならない業務ですが、専門知識を要し特定の期間に業務が集中するためアウトソーシングする企業が多いです。また、作成した書類の提出先が労働基準監督署、ハローワーク、保険協会、年金事務所とそれぞれ異なるため、さらに負担になることがあります。アウトソーシングすれば各機関への書類提出も代行してくれるため、業務の負担が軽くなります。
勤怠管理
勤怠管理業務とは従業員の出退勤の管理や労働時間が適切かチェックすることです。具体的には以下の業務が挙げられます。
・労働時間のチェック
・残業時間の管理
・有給休暇、長期休暇の管理
・シフト登録
勤怠管理業務のアウトソーシングには、オンラインで業務を代行してくれるオンラインアシスタントサービスとクラウド上で管理するクラウドサービスの2種類があります。どちらのサービスでも労働時間管理だけでなく、コンプライアンスに違反していないかのチェックも代行してくれます。
納税業務・年末調整業務
納税業務は税金の納付業務、年末調整業務は従業員の1年間の給与額から税金を計算し、源泉徴収した所得税額との過不足を計算する手続きのことです。特に年末調整業務は年末に仕事が集中するため、アウトソーシングすることによって経理部や人事部の負担を減らせます。
採用業務
採用業務とは企業に必要な人材の確保に向けた計画立案から、内定者の入社後のフォローまでの一連の流れを指します。具体的な流れは以下のようになります。
・母集団形成
・応募者の選考
・内定者のフォロー
採用計画立案
採用計画とは今後の事業計画を基に採用時期や採用人数、雇用形態を決定することです。企業の求める人材像と採用の目的を明確化し、内定者選定までのスケジュールを組んでいきます。
母集団形成
採用計画を立てたら、企業が求める人材が多く集まる採用領域のなかで母集団を形成します。母集団とは自社の求人に応募してくれる求職者の数です。一般的な母集団の形成方法は、求人・転職サイトや企業説明会、SNSを活用することです。どのような方法を採用すれば求める人材が多く集まるのかを重点に戦略を練ります。
応募者の選考
母集団を形成できたら、書類選考や面接を通して応募者を選考します。精度の高い選考を行うためには求める人物像を基に適切な選考内容を考えることが重要です。
内定者のフォロー
内定者を決定したら、内定者に通知し入社意思を確認します。その後、内定者が企業に気持ちよく入社できるように入社までのフォローを行います。面談や入社説明を丁寧に行い、内定者の不安をできる限り払拭することで、内定辞退の防止につなげます。
採用代行では、以上の採用の流れに沿って、求人広告やスカウトメールの作成、説明会の実施業務を依頼できます。
労務代行(アウトソーシング)のメリット
労務代行を利用する企業は年々増加しています。それは労務代行の利用によってさまざまなメリットが期待できるからです。
コストを削減できる
労務代行を利用することで企業内での労務にかかるコストを削減できます。例えば労務担当者の人件費、労務事務に使用するシステムの費用です。労務事務は管理が煩雑なうえに専門知識を要するため、金銭的な面だけでなく時間的な教育コストも必要になってきます。システムの費用もアップデートや買い替えによって定期的に発生します。特に給与計算業務に必要なソフトウェアは、毎年のように起こる法令改正・税制改正によって、その都度買い替えが要求されます。労務代行を利用することでこれらの費用を削減できます。
業務を効率化できる
労務事務は専門的な知識が必要な一方で、業務内容は定型的なものがほとんどです。労務事務をアウトソーシングすれば、労務担当者の負担が軽減され主要事業に集中できます。よって、業務が効率化され企業の利益拡大が期待できます。
法令改正に対応できる
毎年のように改正される法令や税制、社会保障制度によって労務にかかる負担は大きくなっています。システムのアップデートやソフトウェアの再購入の手間だけでなく、新しく改正された制度を常にチェックすることはかなりの負担です。労務代行によってそれらの負担を専門家に任せられるので、法令改正に対する負担を軽減できます。
季節的業務の人員を調節できる
労務代行によって、季節的な業務の集中を緩和できます。労務事務は毎月行われる定型的な業務以外に、年末調整業務や採用業務など季節的な業務も多くあります。例えば4月の労働保険・社会保険業務、12月の年末調整業務です。労務をアウトソーシングすることで、これらの業務に人員を割かずに済みます。
労務代行(アウトソーシング)のデメリット
労務代行にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。
自社にノウハウが蓄積されない
労務代行によって、社内に労務事務の知識が蓄積されなくなります。アウトソーシングによって労務担当者は主要業務に集中できる一方、労務の知識を活かす場で業務をしなくなります。労務事務のノウハウが社内に蓄積されないと、労務代行を依頼した企業になにかあった時に自社での対応ができなくなります。
ある程度の業務負担は残る
労務代行といっても全ての作業を代行してくれるわけではありません。例えば、給与計算業務の代行を依頼しても、勤怠データの集計は代行業務の内容に含まれていなかったり、別料金になったりすることがあります。業務範囲は企業によってさまざまです。
情報漏洩の危険性がある
労務代行先に提出する書類には従業員の個人情報や企業の機密情報が含まれていることがあります。社内データを社外に提出する労務代行は情報漏洩のリスクがあります。依頼先の企業がどのような情報管理体制を採っているかを事前に調べることが重要です。
労務代行(アウトソーシング)の費用
労務代行の費用は業務内容や企業規模によって異なります。ここではそれぞれの業務内容の相場について説明していきます。
給与計算業務
給与計算業務は社員50名規模で月額40,000円〜60,000円です。
納税業務/・年末調整業務
納税業務や年末調整業務は単体でも依頼できますが、一般的に給与計算業務のオプションとして依頼することが多いです。納税・年末調整業務を依頼する場合は100,000円〜200,000円が相場になります。
労働保険・社会保険業務
労働保険・社会保険業務は社員50人規模で月額60,000円〜80,000円が相場です。
勤怠管理業務はクラウドサービスを利用する場合、システム導入費が30,000円〜500,000円かかります。また、ランニングコストとして従業員1人につき200円〜500円の月額費用が必要です。システムの種類がさまざまで、どのシステムを導入するかによって初期費用が異なります。
採用業務
採用業務も部分委託か全体委託、新卒採用か中途採用かによって料金が異なります。月額一律の料金プランの場合、部分委託で100,000円〜200,000円、全体委託では400,000円以上になることもあります。また、業務別に費用を算出した場合、新卒採用で月額50,000円〜700,000円、中途採用で100,000円〜700,000円が相場です。
自社が依頼したい業務内容や企業規模によっても金額は違いますが、サービスを提供する企業によっても料金の計算方法や相場が変わってきます。自社に最も合っているプランを選択するために、依頼内容を明確化し、複数のサービスを比較することが重要です。
労務代行(アウトソーシング)を活用する際の注意点・選び方
ここでは労務代行を活用する際の注意点と、依頼する企業の選び方について説明します。
予算に合った料金であるか
労務代行を依頼する場合のコストが自社で労務事務を行った場合のコストを上回ってしまっては意味がありません。自社で行った場合の人件費やシステム導入費、維持費などの総合的な費用とアウトソーシングしたい業務の料金を比較し、本当にコストを削減できるのか確認することが重要です。代行費用は依頼する業務範囲やオプションによって異なります。一貫して依頼するのではなく、依頼する業務と自社で行う業務を組み合わせて費用を抑えることも可能です。
依頼したい業務に対応できるか
労務代行の業務はさまざまです。代行サービスを提供している企業にはそれぞれの得意分野があるので、業務の内容によって依頼先は変わります。例えば、納税業務や年末調整業務は税理士の行う代行業務になります。また、社会保険・労働保険業務は社会保険労務士の独占業務です。よって、これらの業務を依頼するときは士業を得意としている専門的な企業への依頼をおすすめします。税理士や社労士のいない代行サービスは、給与計算や勤怠管理といった独占業務以外の労務を代行します。どの業務をアウトソーシングしたいのかを社内で明確化し、その業務に対応できるサービスを選びましょう。
安全性が高く、セキュリティが徹底されているか
労務代行を依頼するには、従業員の情報や企業の内部情報を依頼先に提供する必要があります。情報漏洩のリスクを防ぐために、依頼先の情報の扱い方やセキュリティ面に注意することが重要です。依頼先のセキュリティ面についてわかりづらい場合は、過去の依頼実績を指標に安全性を評価するのも1つの手です。
労務代行(アウトソーシング)サービス5選
ここでは業務内容別の労務代行サービスをご紹介します。
株式会社uloqo
株式会社uloqoは、人事評価制度設計や労務コンサルなど人事領域の支援を強みとする企業です。以下が株式会社uloqoのサービスの特徴です。
・採用から労務、評価まで一気通貫のノウハウを有するコンサルタントによる労務代行で、ビジネス視点を持った提案が可能です。
・従業員対応(ex入退社時の面談対応など)も含めて代行が可能です。自社で労務専任担当者を採用するより低いコストで、あらゆる労務業務を担当可能です。
・業務の全てをマニュアル化。インハウス運用時にもスムーズな移行が可能です。
・ディレクターとオペレーターの二名体制による支援で、上流〜下流それぞれにおける対応力を有しています。
・チャットおよび電話を通したクイックレスポンス対応が可能です。
・解約実績なし。手厚いフォローアップで満足度の高いサービスです。
CASTER BIZ HR
CASTER BIZ HRは株式会社キャスターが運営する人事労務を得意とするオンラインアシスタントサービスです。実務経験が豊富なアシスタントが、社労士資格保有者と連携しながら対応してくれます。
CASTER BIZ HRの特徴は以下の通りです。
・給与計算や勤怠管理業務を中心に人事に関わる手続きを幅広く担当
・ゲーム業界大手企業等、現在の導入企業累計数は2000社を突破
料金プラン | 契約期間 | 価格/月 |
ベーシック | 6ヶ月 | ¥210,000(税込¥231,000) |
ロング | 12ヶ月 | ¥189,000(税込¥207,900) |
カスタマイズ | 要相談 | 要相談 |
Remoba労務
Remoba労務は人事業務をまるっと請け負うクラウドサービスです。給与計算・勤怠管理だけでなく社員の入社・退社手続きなど人事労務に関する細かな手続きまで代行してくれます。
Remoba労務のそのほかの特徴は以下の通りです。
・納税・年末調整業務も担当
・社労士クラウドサービスのプロフェッショナルが監修
・クラウドサービスの活用支援に注力し、幅広いクラウドシステムに対応
料金プラン | 契約期間 | 価格/月 |
月間プラン | 1ヶ月 | ¥200,000 |
年間プラン | 1ヶ月 | ¥180,000 |
カスタムプラン | 要相談 | 要相談 |
勤怠@Web
勤怠@Webは株式会社キャリアビジョンが運営するクラウド型勤怠管理システムです。
勤怠管理以外にも給与計算、年末調整業務も代行してくれます。
豊富なオプションで企業の就業規則に合わせた独自のカスタマイズが可能です。
料金プラン(従業員1000人の場合) | 初期導入費用 | 月額利用費用 |
標準機能 | ¥750,000 | ¥250,000 |
シフトオプション | ¥150,000 | ¥40,000 |
有休オプション | ¥150,000 | ¥40,000 |
お知らせオプション | ¥75,000 | ¥20,000 |
COMIT HR
COMIT HRは株式会社InfoDeliverが運営する労務代行サービスです。給与計算、勤怠管理だけでなく年末調整や納税、社会保険業務まで幅広く対応してくれます。
COMIT HRのその他の特徴は以下の通りです。
・システムの移行からメンテナンスまで、給与、勤怠のフルアウトソーシングが可能
・20年の運営実績を誇り、業界トップレベルのコストパフォーマンスを実現
・顧客独自の給与規定や就業規則に合わせたオーダーメイドスタイルが強み
・価格は従業員200人で給与計算のみを依頼した場合、初期費用に1,140,000円、年間のランニングコストが2,280,000円~
まとめ
一言に労務代行といっても、その内容は給与計算から採用業務までさまざまです。代行サービスを提供する企業もそれぞれ得意分野があり、専門性があります。労務代行を依頼するときは依頼内容を明確化し、どのサービスを利用すれば利益を得られるのか慎重に考えることが重要です。
もし外部に委託せずに労務事務を効率化させたい場合は、労務管理システムの導入がおすすめです。労務管理システムを導入することで、オンライン上での入退社手続きや各種保険手続きに必要な書類の自動作成を実現でき、労務事務にかかる作業時間を大幅に削減できます。
おすすめの労務管理システムを知りたい方は「労務管理システムおすすめ15選タイプ別徹底比較」の記事を参考にしましょう。
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人事労務の仕事とは?役割・業務内容の紹介や仕事に向いている人の特徴を解説
株式会社uloqo労務代行サービスの6つの魅力
✓採用から労務、評価まで一気通貫のノウハウを有するコンサルタントによる労務代行で、ビジネス視点を持った提案が可能です。
✓従業員対応(ex入退社時の面談対応など)も含めて代行が可能です。自社で労務専任担当者を採用するより低いコストで、あらゆる労務業務を担当可能です。
✓業務の全てをマニュアル化。インハウス運用時にもスムーズな移行が可能です。
✓ディレクターとオペレーターの二名体制による支援で、上流~下流それぞれにおける対応力を有しています。
✓チャットおよび電話を通したクイックレスポンス対応が可能です。
✓解約実績なし。手厚いフォローアップで満足度の高いサービスです。
✓広告業界最大手グループのネット広告代理店等、50社以上との取引実績あり
✓契約継続率90%以上を誇る高品質サービス
✓月額200,000円~の圧倒的コストパフォーマンスを実現
✓調査から制度検討、シュミレーション、運用までトータルでサポート
✓評価者研修、従業員に向けた説明会、評価シート作成、1on1面談コンサルティング等も実施
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