人事評価の場面ではしばしば評価者の主観や先入観が影響して不適切な評価に陥る「人事評価エラー」が見られます。評価者は評価エラーについてあらかじめ理解を深め、回避のための施策を取る必要があるでしょう。
企業の人事担当者様の中には、
- そもそも人事評価エラーにはどのような種類があるの?
- その原因を理解したい
- 対策法にはどのようなものがあるの?
など、さまざまな疑問や不安を抱える方が多いかもしれません。
本記事では人事評価エラーの種類とその原因、対策について、詳しくご紹介します。
人事評価コンサルティングの基礎知識
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人事評価エラーとは
人事評価エラーとは、評価者が主観や感情に左右された結果、偏りのある評価に陥ることを指します。無意識のうちに発生することも多いですが、そうした不適切な人事評価は、社員のモチベーション低下や部下と上司の関係悪化などにつながります。
評価の公平性・客観性を保つために、対策を講じる必要があるでしょう。
人事評価エラーの原因
人事評価エラーには意図的なものも無意識的なものもありますが、その多くは「バイアス」が原因となっています。
人種、性別、年齢、出身など、さまざまな要素に基づくバイアス(偏見、先入観)が、人事評価に影響を与えている場合が多いです。
人事評価は人が行うものなので、バイアスを完全に無くすことは難しいですが、評価者となる管理職・マネジメント職は最大限に配慮する必要があります。
人事評価エラーの問題点
人事評価エラーの問題点は3つあります。
- 社員のモチベーション低下
- 組織全体の生産効率の悪化
- 人事評価への信頼性低下
それぞれについて詳しく解説します。
社員のモチベーション低下
人事評価エラーは、社員の実際の行動や成果に評価が伴っていない状況を指すため、社員の勤労意欲をそいでしまう恐れがあります。モチベーションの低下はパフォーマンスの低下に繋がり、それが更なるモチベーションの低下を招くといった負のスパイラルが予想されます。
組織全体の生産効率の悪化
モチベーションの低下が会社全体に波及することで、組織全体のパフォーマンスが落ち生産性が低下する恐れがあります。生産性が下がると本来の仕事の水準を満たせないだけでなく、提供するサービスの質が低下し会社のイメージダウンを引き起こす可能性もあります。
人事評価への信頼性低下
人事評価が評価者の主観や先入観に影響を受けていることが認識された場合、社員間で人事評価への不信感が蓄積されます。不満が募った結果、評価者との関係悪化や離職率の上昇が引き起こされる可能性があります。
人事評価エラー11種類
人事評価エラーには、以下の11種類があります。
- ハロー効果
- 中心化傾向
- 寛大化傾向
- 逆算化傾向
- 論理誤差
- 対比誤差
- 期末誤差
- 極端化傾向
- 厳格化傾向
- 親近効果
- アンカリング
それぞれについて、詳しく解説します。
ハロー効果
被評価者が持つ目立った特徴に引きずられ、他の評価が歪められることを「ハロー効果」と言います。例えば5段階評価で営業成績が5だった社員に対し、他の評価項目も事実に関係なく5や4を付けてしまうケースが挙げられます。
中心化傾向
パフォーマンスやポテンシャルの優劣に関わらず、評価が中間値に集中する傾向を「中心化傾向」と言います。例えば5段階評価で、実績に関わらず評価が3に集中するケースが挙げられます。評価業務への自信のなさや人間関係への過度な配慮が要因として考えられます。
寛大化傾向
全体的に評価が甘くなる傾向を「寛大化傾向」と言います。部下からの反発を恐れたり部下から良く思われたいと意識する場合に発生しやすいです。実績に見合わない高評価は部下の能力開発の妨げになる恐れがあります。
逆算化傾向
最終的な評価結果を先に決め、その結果になるよう逆算して各項目の評価を調整することを「逆算化傾向」と言います。例えば昇格や昇給等の処遇を先に決定し、その基準に達するように評価内容の帳尻合わせを行うケースが挙げられます。
論理誤差
事実を確認せず、評価者の推論に基づいて評価を下すことを「論理誤差」と言います。例えば被評価者の出身大学や所属団体から、職務遂行能力の高低を判断し評価に反映させるケースが挙げられます。
対比誤差
評価者自身の能力を基準にし、被評価者の能力を比較して評価することを「対比誤差」と言います。例えば自分の専門・得意分野においては厳しく、専門外・苦手分野に関しては甘く評価するケースが挙げられます。
期末誤差
評価期間終盤の出来事に全体の評価が影響されることを「期末誤差」と言います。例えば同じ業務ミスであっても、発生時期が期首か期末かで評価が変わるケースが挙げられます。また、評価時期だけ努力する社員を発生させる恐れがあります。
極端化傾向
極端化傾向とは、評価に差をつけようとして極端な評価に陥る傾向のことです。評価が平均値に固まってしまうことを避けようとする傾向で、中心化傾向とは逆の現象と言えます。
具体的には、部下の評価にメリハリをつけるために、5段階評価で「1」や「5」などの最低値や最高値のみを選択することなどが挙げられます。
厳格化傾向
厳格化傾向とは、評価が全体的に厳しくなる傾向のことです。寛大化傾向とは、逆の現象と言えます。
部下の悪い面ばかりに注目をしたり、自分自身が優秀で基準が高くなっていたりする場合に発生しがちです。
自分自身が厳しい環境で教育を受けたために、部下に厳しい評価をつけてしまうこともあるでしょう。
親近効果
親近効果とは、共通の特徴を持つ人に対して評価が甘くなる人事評価エラーです。出身大学が同じであったり、同じ趣味を共有していたりするなど、共通点があることによって被評価者に対する親近感が生じ、その影響で評価が偏る傾向があります。
また、部下とプライベートで親交がある場合にも同様のエラーが発生しやすくなります。
アンカリング
アンカリングは、初めに受けた印象によって評価結果が影響される人事評価エラーです。
この「アンカー」という言葉は、船が動かないようにするための「碇」を指します。例えば、一度部下に4という評価をつけると、他の部下に対しても4をつけがちになる場合などがあります。
人事評価エラー8つの対策法
実際に人事評価エラーを防ぐ対策法には以下の8つがあります。
- 具体的事実に基づいて評価する
- 評価基準を明確にする
- 一つの事実は一つの要素として評価する
- 公私混同しない
- 評価者同士で基準のすり合わせを行う
- 複数評価者により評価する
- 評価者研修を行う
- フィードバック面談を行う
それぞれについて詳しく解説します。
具体的事実に基づいて評価する
被評価者のイメージや固定観念が評価に影響しないよう、具体的な事実に基づいて評価する姿勢が重要です。そのためには日頃の社員の仕事ぶりを記録するなどして、行動事実を評価へ反映させる必要があります。
評価基準を明確にする
基準が曖昧であれば、評価の詳細は評価者の裁量に委ねられるため評価エラーが発生しやすくなります。評価項目を明確に定義し、評価者へ周知させることで基準に基づいた客観的な評価が可能となります。
1つの事実は1つの要素として評価する
1つの評価結果に他の項目の評価が引きずられないよう、各事実は別々の要素として評価する必要があります。むやみに他の項目と関連付けを行うと、ハロー効果によって全体の評価が似通ったものとなり評価の信頼性が低下します。
公私混同しない
プライベートでも仲の良い社員や気の合う社員に対する評価は、反発や人間関係の悪化を恐れて寛大化傾向に陥りやすくなります。部下を指導し育成するという意識を持って、客観的視点から評価を行うことが重要です。
評価者同士で基準のすり合わせを行う
個人の主観や価値観に評価が影響されないよう、評価者同士であらかじめ認識を確認しておくことも重要です。具体的な対策としては、評価の二段階制やチェック機構の導入等が挙げられます。第三者の意見を取り入れることで、より公正な人事評価に近づけられます。
複数評価者により評価する
人事評価エラーを減少させるためには、360度評価など多角的な視点からの評価が有効です。複数の評価者の意見をバランスよく取り入れることで、偏りを防ぎましょう。
また、自己評価を含め、一次評価者と二次評価者による段階的な評価プロセスを採用することも有益です。これにより、さまざまな視点を反映させ、人事評価エラーを軽減することが可能となります。
360度評価(多面評価)を用いることで、人事評価の妥当性・信頼性を高められるほか、社員の自律性・責任感を高めることもできます。
360度評価(多面評価)とは?メリット・デメリットや導入事例などについて徹底解説します。
評価者研修を行う
公正な人事評価を行うためには、評価基準や評価方法について評価者が正確に理解しておく必要があります。評価者研修を通じて、人事評価の目的・注意すべきポイントや正しい評価手順について理解を深め評価スキルを向上させることができます。
人事評価制度の研修の内容とは?人事向けの評価者研修のポイントを解説
フィードバック面談を行う
評価制度の成果を最大化するためには、定期的に目標を振り返る機会が不可欠です。フィードバック面談を通じて、従業員のモチベーションや心理状態の変化を明確に把握できます。
目標設定を柔軟に見直し、人事評価エラーの影響が生じていないかどうかを確認することが重要です。
人事評価フィードバック・シートの書き方や例、面談を解説
まとめ
いかがでしたか。本記事では、人事評価エラーの種類や対策について詳しく解説しました。
人事評価エラーが生じることで、人事評価への信頼性が失われたり社員のモチベーション低下を招く恐れがあります。評価者は人事評価エラーについて事前に把握し、エラーに陥らないよう自身の評価体制を随時見直して改善を図る必要があります。
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