こんにちは。digireka!HR編集部です。
憲法では、障害の有無にかかわらず全国民に平等な社会参画が認められていますが、障害者雇用における課題は依然として多く存在しています。そのような問題を解消し、障害者の雇用を推進するための制度として様々な助成金制度が設置されています。今回は障害者雇用の助成金制度について、種類や受給条件などを詳しく説明します。
障害者雇用助成金とは
障害者雇用助成金とは、企業の障害者雇用における一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的として支給される助成金です。障害者を雇用するにあたり、施設・設備の整備や障害者の雇用管理において必要以上のコストを要する場合があります。それにより障害者の新規雇用や雇用の継続が困難であると認められる場合に、その企業や事業主に対して予算の範囲内で助成金が支給されます。
障害者雇用助成金の種類一覧と受給条件・金額
特定求職者雇用開発助成金
【特定就職困難者コース】
高年齢者や障害者などの就職が特に困難な者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して支給される助成金になります。
主な受給条件
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用の確実性が認められること(65歳以上に達するまでの継続雇用であり、雇用期間が2年間以上であること)
受給額
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | |
短時間労働者以外 | 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 50万円 (120万円) | 1年 (2年) |
重度障害者等 | 100万円 (240万円) | 1年6か月 (3年) | |
短時間労働者 | 重度障害者を含む身体・知的・精神障碍者 | 30万円 (80万円) | 1年 (2年) |
※()内は中小企業。
※短時間労働者…一週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者。
【発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース】
ハローワークまたは民間企業の職業紹介事業者等の紹介により、発達障害者または難治性疾患患者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して支給される助成金になります。
主な受給条件
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用の確実性が認められること
受給額
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 |
短時間労働者以外の物 | 50万円 (120万円) | 1年 (2年) |
短時間労働者 | 30万円 (80万円) | 1年 (2年) |
※()内は中小企業。
【障害者初回雇用コース(ファースト・ステップ)】
障害者雇用の経験のない中小企業(障害者雇用率制度の対象となる労働者数45.5~300人の中小企業)が障害者を初めて雇用し、当該雇入れによって法定雇用率を達成する場合に支給される助成金となります。
主な受給条件
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
・雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用の確実性が認められること
・支給申請時点で、雇用中の常用労働数が45.5人~300人の事業所であること
・初めて障害者を雇い入れ、1人目の雇用から3ヵ月以内に法定雇用率を達成すること
・1人目の雇用の前日までの過去3年間に、当該人物を雇用していないこと
受給額
120万円
トライアル雇用助成金
職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者を、一定の期間試行雇用し、正規雇用につなげるための助成金です。試行雇用を通じて、適性や可能性を判断し、求職者と企業の相互理解を促進します。トライアル雇用助成金はこれらの求職者における早期就職の実現や雇用機会の創出を目的としています。トライアル雇用助成金は4つのコースに分けられており、その中で障害者に特化したコースが「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2つとなります。
トライアル雇用の受給条件や受給額については以下の記事で詳しく解説しています。
→「トライアル雇用は試用期間と何が違う?対象者や助成金について徹底解説します。」
障害者雇用安定助成金
障害の性質を配慮した雇用管理・働き方の見直し、職場定着に困難を抱える障害者に対するジョブコーチ計画に基づく支援などを行っている事業主に支払われる助成金です。
【障害者職場定着支援コース】
障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しを行う事業主に対して助成金を支払うことで、雇用する障害者の職場定着・一層の雇用促進を目的としています。
主な受給条件と受給額
対象の労働者に対して以下の措置を講じた場合に受給することができます。
措置 | 対象者(記載のうちのいずれか) | 支給額 | 助成対象期間 |
柔軟な時間管理・休暇取得 | ・身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 ・発達障害者 ・難治性疾患のある方 ・高次脳機能障害のある方 | 6万円 (8万円) | 1年 (1年) |
短時間労働者の勤務時間延長 | 15万円~40万円 (20万~54万円) ※障害の種類や時間変更の内容による。 | 1年 (1年) | |
正規・無期転換 | 33万円~90万円 (45万~120万円) ※障害の種類や重さ、時間変更の内容による。 | 1年 (1年) | |
職場支援員の配置 | 短時間労働者:1.5万円(2万円) それ以外:3万円(4万円) | 2年 (2年) | |
中高年障害者の雇用継続支援 | 50万円 (70万円) | 1年 (1年) | |
職場復帰支援 | ・身体障害者 ・知的障害者 ・難治性疾患のある方 ・高次脳機能障害のある方 | 4.5万円 (6万円) | 1年 (1年) |
障害者支援に関する社内理解の促進 | ・事業所に雇用される労働者 | 2万円~9万円 (3万~12万円) | 1年 (1年) |
※()内は中小企業。
人材開発支援助成金
【障害者職業能力開発コース】
障害者に対して職業能力開発訓練事業を実施する事業者に対して支給される助成金です。
主な受給条件
厚生労働省によって指定されている10個の要件全てを満たす必要があります。以下に一例を示します。
・運営管理者は教育訓練事業に係る経験を5年以上有する者であること
・教育訓練期間は6か月以上2年以内であること
・6か月について700時間を基準とし、訓練時間は1日5~6時間を標準とすること
・教育訓練を受講する際に必要な教材の費用として事前に明示したものを除き、無料であること
受給額について
・訓練事業を行う設備の設置・整備・更新に要した費用の3/4に値する額が助成される
・初めて助成金の対象となる設備の場合は5000万円を上限とする
・訓練科目ごとの設備の更新の場合、1000万円を上限とする
・重度障害者が就職した場合、1人あたり10万円が支給される
運営費に関しては対象労働者の種類によって異なります。
参照 : )「雇用・労働分野の助成金のご案内 (詳細版) – 厚生労働省」
障害者雇用助成金の申請方法
特定就労困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース、障害者初回雇用コース
期日までに、「特定求職者雇用開発助成金支給申請書」に必要書類を添え、都道府県の労働局へ支給申請する必要があります。特定就労困難者コースと発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの期日は、支給対象期の末日の翌日から2か月以内、障害者初回雇用コースの期日は、雇入れ完了日直後の賃金締切日の翌日から12か月後の翌日から2か月以内です。
障害者トライアルコース、障害者短時間トライアルコース
まず、職業紹介を受けた機関に「障害者トライアル雇用等実施計画書」を提出します。職業紹介事業者からの紹介の場合は、雇用保険適用事業所の所在地を管轄する労働局かハローワークに提出します。その後、期日までに指定の「支給申請書」を管轄のハローワーク経由で労働局に提出します。
障害者雇用定着支援コース
受給資格の認定申請を行うためには、措置を開始する日の前日から1か月前までに、「職場定着支援計画書」を管轄の労働局へ提出する必要があります。この職場定着⽀援計画は雇用する障害者の職場定着に向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(計画の対象となる障害者、期間、事業主が行う措置、計画全体の流れ)を記載します。
受給資格の認定を受けた上で、対象となる障害者に上記表内の7つに該当する措置を実施し、6か月以上職場に定着させた場合に助成金が支給されます。 支給申請期間中に、指定の「支給申請書」に必要な書類を添え、受給資格の認定申請を行った労働局へ支給申請を行います。
障害者職業能力開発コース
⑴施設または設備の設置・整備または更新
訓練施設・設備事業に着手する前に、管轄の労働局に対して助成金受給資格の認定申請を行います。指定期間内に、「人材開発支援助成金受給資格認定申請書」、「人材開発支援助成金認定申請明細書」、「障害者職業能力開発訓練事業計画書」等の必要書類を管轄の労働局に提出しなければなりません。
また、訓練施設・設備事業が完了した日の翌日から2か月以内に「人材開発支援助成金支給申請書」、「人材開発支援助成金実績明細書」、「人材開発支援助成金支払内訳明細書」等の書類を管轄の労働局に提出する必要があります。
⑵運営費
職業訓練を開始する3か月前までに、管轄の労働局に、助成金受給資格の認定申請を行います。指定期間内に、「人材開発支援助成金受給資格認定申請書」、「障害者能力開発訓練事業計画書」等の書類を管轄の労働局に提出しなければなりません。
運営費は四半期ごとの支給となるため、支給対象期の末日の翌日から2か月以内に、「人材開発支援助成金支給申請書」、「人材開発支援助成金支払内訳明細書」、「人材開発支援助成金支給申請額計算書」、「訓練受講状況報告書」等の書類を管轄の労働局に提出することが必要です。
障害者雇用における注意点
障害者雇用率制度・障害者雇用納付金制度
民間企業の障害者における法定雇用率は2.2%となっており、企業は常時雇用している労働者数のうち2.2%以上の障害者を雇用することを義務付けられています。従業員を45.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。(令和3年3月1日から法定雇用率が2.3%に引き上がるため、対象となる事業主の範囲は43.5人以上に広がります。)この法定雇用率の条件を満たしていない場合、納付金を納めることが必要となります。なお、納められた納付金は、法定雇用率を達成している企業の助成金などに利用される仕組みが整えられています。
ハローワークからの行政指導
障害者雇用率制度の雇用義務を満たしていない場合、ハローワークからの行政指導が入ります。事業主は雇用状況の報告、雇入れ計画の作成を命じられ、ハローワークの指導のもと、着実な障害者雇用を実施します。
企業名の公表
ハローワークからの行政指導が入ったのにもかかわらず、障害者の雇用状況の改善が遅れた場合は、特別指導が入り、企業名が公表されます。企業名を公表されると、社会貢献度が低い企業としてのイメージが定着し、ブランディングや評判に悪影響が出る恐れがあります。また、不足数の特に多い企業については、厚生労働省本省による直接指導も実施しています。
参照 : ) 「事業主の方へ – 厚生労働省」
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、障害者雇用助成金制度について詳しく説明しました。
障害のある方が働きやすい環境を整備するためには、労働者の障害特性に応じて適切な助成金制度を活用していくことが重要です。障害者雇用を検討している事業主の方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
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