36協定とは?締結時の注意点や変更点を解説!【2022年版】

36協定とは?締結時の注意点や変更点を解説!【2022年版】

労使間の協定は後々トラブルの火種になる可能性もあり、不安を感じやすいですよね。時間外労働に関する36協定ならなおさらです。
本記事では36協定について、締結する際の注意点から無効になる事例、時間外労働の上限時間まで詳しく紹介しています。
この記事を読むことによって、疑問や不安・悩みを解消していただければ幸いです。

36(サブロク)協定とは

36(サブロク)協定とは、従業員に残業をさせるための協定のことを指します。
労働基準法第36条に基づく労使協定であるため36協定と呼ばれていますが、正式名称は「時間外労働・休日労働に関する協定」です。
この36協定が締結されていなければ残業自体が労働基準法違反となってしまいます。

36協定なしで残業すると違法になる理由

先ほども触れましたが、36協定がなければ残業自体が労働基準法に違反する違法行為となってしまいます。
それはなぜでしょうか。
理由は単純で、労働基準法で労働時間が設定されているからです。1日8時間、週40時間という労働時間が法律で定められており(法定労働時間)、これを超える時間労働することは違法とされています。

労働基準法 第32条
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法|e-gov 法令検索

36協定はどうやって締結する?

従業員の許可を得ず36協定を締結する、ということはできません。
では、どうやって締結するのでしょうか。締結する方法は以下の2通りあります。

36協定の締結方法〈労働組合に全従業員の半数以上が加入している場合〉
・労働組合と協定を結ぶ
※全従業員=パート・アルバイトなども含む〈労働組合がない、もしくは半数以上が加入していない場合〉
・過半数代表者と協定を結ぶ
※全従業員の過半数の賛成をもって過半数代表者を選出

36協定を締結する際の注意点

36協定を締結する際に注意したいのは次の3点です。

「全従業員」にはパート・アルバイトなども含まなければならない

労働組合に全従業員の半数以上が加入していることが労働組合と36協定を結ぶ条件です。
「全従業員」には、正社員だけでなくパート・アルバイトなども含む必要があります。
この「全従業員」の定義を間違えることで労働組合が条件を満たさず、36協定が無効になることもあるのです。

過半数代表者は民主的な手段で選ばれなければならない

まず、過半数代表者とは労働者の半数以上の賛成を得て選出された労働者の代表のことを指します。過半数代表者を選出する際は「過半数代表者を選出する」という意図を明らかにした上で、パート・アルバイトなども含めた全従業員がその選出方法に参加できなければなりません。

管理監督者は過半数代表者になれない

管理監督者は経営者と一体的な立場であるとされるため、労働者の代表である過半数代表者にはなれません。また、下記の条件を満たす人が管理監督者とされます。一般的に管理職とされる人とは異なるので注意しましょう。

・重要な職務内容を有している
・重要な責任と権限を有している
・勤務態様が労働時間などの規制になじまないものである
・賃金などについて地位にふさわしい待遇がなされている

36協定が無効になる事例とその原因

36協定を締結していても協定自体が無効となるケースが存在します。締結時におけるルールを正確に認識していないことが原因になり得るので注意しましょう。
具体的な事例は以下の通りです。

36協定が無効になる事例

・労働組合と36協定を締結していたが、その労働組合に加入している従業員が全従業員の半数以下だった
・過半数代表者の選出方法が不明瞭なものだった
・過半数代表者を企業側が指名していた
・過半数代表者ではない従業員に協定届に署名させていた
・過半数代表者が管理監督者だった

※過半数代表者とは、労働者の半数以上の賛成を得て選出された労働者の代表のことを指す。

36協定が無効になる原因

もちろん、必要書類に正確に不備なく記入することも大切です。しかし上記の「36協定が無効になる事例」は書類の記入漏れなどではありません。なにが原因で無効になってしまうのでしょうか。以下で解説します。

・労働組合と36協定を締結していたが、その労働組合に加入している従業員が全従業員の半数以下だった
→全従業員の半数以上が加入している労働組合があれば、その労働組合と36協定を締結できます。しかし、半数に満たない場合は過半数の代表である過半数代表者と36協定を結ばなくてはなりません。ここで注意したいのが、「全従業員の半数」という基準です。この全従業員というのは、パート・アルバイトなどを含めたすべての労働者のことを指すので注意しましょう。

・過半数代表者の選出方法が不明瞭なものだった
→「過半数代表者を選出する」という意図を明らかにした上で、パート・アルバイトなども含めた全従業員がその選出方法に参加できなければなりません。例として、投票や挙手、労働者による話し合いが挙げられます。

・過半数代表者を企業側が指名していた
企業から過半数代表者を指名することはできません。投票などの民主的な手続きが取られていることが必要です。

・過半数代表者ではない従業員に協定届に署名させていた
→もちろん、過半数代表者以外の従業員に署名させてはいけません。

・過半数代表者が管理監督者だった
管理監督者は過半数代表者になれないというルールが存在します。管理監督者は労働者の代表にはならないと考えられるからです。

36協定で覚えておきたい上限時間に関する数字

36協定を締結するにあたって、覚えておきたい上限時間に関する数字があります。その数字は以下の5つです。

45・360・100・80・720

それぞれの数字について解説していきます。

36協定で覚えておきたい上限時間に関する「45」「360」

「45」「360」
この2つの数字は時間外労働の上限時間です。

期間時間外労働の上限時間
1か月あたり45時間
1年あたり360時間

36協定で覚えておきたい上限時間に関する「100」「80」「720」

「100」「80」「720」
これらの数字は臨時的な特別の事情がある場合に適応される上限時間です。一般的な36協定では労働させることができない時間を労働させるため、臨時的な特別の事情がある場合は特別条項付き36協定を結ぶ必要があるので注意しましょう。

臨時的な特別の事情:通常予見することのできない業務量の大幅な増加等、と労働基準法によって定義されています。また、「全体として1年の半分を超えない」という条件もあるので注意しましょう。具体例として、予算・決算業務や納期の切迫、システムトラブル対応といったものが挙げられます。

〈臨時的な特別の事情がある場合〉

期間時間外労働と休日労働の合計
1か月あたり100時間未満
2~6か月間のすべての平均が1か月あたり80時間以内
期間時間外労働の上限時間
1年あたり720時間

※時間外労働が月45時間を超えることができるのは1年あたり6か月が限度

36協定に関する罰則

36協定に違反した場合、労働基準法第32条に違反したとみなされます。罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。ここで注意したいのが、この罰則の対象には企業だけでなく労務管理担当者も含まれるという点です。
さらには、労働基準監督署に届け出た36協定を労働者に周知させなければ労働基準法第106条に違反したとみなされます。この場合、30万円以下の罰金が課されます。

36協定の周知方法

36協定を労働者に周知させる方法は主に以下の3つです。

・見やすい場所へ掲示、または備え付ける
・労働者に書面で交付する
・磁気ディスクなどに記録し、労働者がその記録内容を常時確認できる機器を設置する

36協定が猶予・除外される事業と職種

36協定や36協定の上限時間について、猶予・除外される事業や業種が存在します。それは以下の5つです。

・建設事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
・新技術・新商品などの研究開発業務

ここから、それぞれについて解説します。

・建設事業
2024年3月31日まで、36協定で定められる上限時間の適用が猶予されます。2024年4月1日からは一般的な上限時間が適用される予定です。

・自動車運転の業務
2024年3月31日まで、36協定で定められる上限時間の適用が猶予されます。2024年4月1日からは1年960時間が上限時間として適用される予定です。

・医師
2024年3月31日まで、36協定で定められる上限時間の適用が猶予されます。2024年4月1日から新たな上限時間が適用される予定ですが、検討中のため内容については未定です。

・鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業
2024年3月31日まで、36協定で定められている「1か月あたり100時間未満」「2〜6か月間のすべての平均が1か月あたり80時間以内」という上限時間の適用が猶予されます。2024年4月1日からは一般的な上限時間が適用される予定です。

・新技術・新商品などの研究開発業務
この業務については、限度時間や特別条項付き36協定における上限時間の規定は適用除外となっています。

36協定を有効にするには

36協定は労使間で締結するだけでは効力を持ちません。
36協定を有効にするためには、時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)を労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定届の様々な様式

また、36協定届には様々な様式があるので注意が必要です。
ここでは、2つの様式について紹介します。

・様式第9号
特別条項がない様式です。時間外労働の限度時間内(45時間/月、360時間/年)まで労働させることが可能です。

・様式第9号の2
時間外労働の限度時間(45時間/月、360時間/年)を超える場合は特別条項付きの様式第9号の2を使用する必要があります。

36協定届の変更点

36協定届は2021年4月から新様式へと変更されています。変更点としては「押印・署名の廃止」「チェックボックスの新設」といったものが挙げられます。「押印・署名の廃止」に関しては、協定届が協定書を兼ねている場合には必要となるので注意が必要です。
旧様式で途中まで作成してしまった、という場合でも大丈夫です。以下のどちらかの対応を取ることで旧様式でも提出可能です。

・旧様式に直接チェックボックスの記載を追記する
・チェックボックスの記載を転記した紙を添付する

チェックボックスの記載:

上記協定の当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は上記協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること。▢(チェックボックスに要チェック)
上記労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第4条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。▢(チェックボックスに要チェック)

引用:時間外労働・休日労働に関する協定届 様式第9号の該当部分

また、新様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

36協定を守るために必要なのは正確な勤怠管理

36協定を遵守するために必要なのは正確な勤怠管理です。従業員がどのくらい働いているのか、いつ残業したのか、といった情報を把握することが必須になるのです。
勤怠管理を行う方法としてはタイムカードや出勤簿といった方法もありますが、勤怠管理システムを導入するという手もあります。場合によっては政府から補助金が出る可能性もあるため、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

36協定は労使どちらにも重要な協定です。不備があれば従業員から不満が出るだけでなく、企業や労務管理担当者に罰則が課される可能性も。本記事が36協定の締結の手助けになれば幸いです。

この記事を書いた人

関川 懸介

株式会社uloqo代表取締役

1990年6月29日生まれ。京都府出身。
新卒でアドテクノロジーベンダーに就職。
その後、リクルートグループの人材斡旋部門において、キャリアアドバイザーとして従事。全社MVP計6回受賞、準MVP計2回受賞。2016年4月に、創業者の当時代表取締役と共に株式会社uloqoを設立。
人材紹介事業、メディア運営、HRsolution事業、uloqoに関わる全事業において、1人で立ち上げから収益化まで担う。

株式会社uloqo労務代行サービスの6つの魅力

✓採用から労務、評価まで一気通貫のノウハウを有するコンサルタントによる労務代行で、ビジネス視点を持った提案が可能です。
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